不動産の決済とは「残代金の授受」と「物件の引渡し」を行う取引の最終段階のことです。
しかし、売買のベテラン仲介営業でも、ヒヤっとするケースは少なくありません。
たとえば、以下のようなケースです。
「仲介営業10年の中で、いちばん手汗をかいたのは、決済の朝、売主様の印鑑証明が足りないことに気づいたときでした」(仲介営業マンBさん談)
その他、現場では「権利証を家に忘れて取りに帰った」「振込限度額を上げていなかった」「ローン完済の手続きが間に合わなかった」といった、ほんの小さなミスが原因で決済が止まり、予定が大きく崩れるケースがあります。最悪の場合は、違約金発生につながることも考えられます。
売主側の厄介なケースとしては、決済が無事に終わったあとに「思ったより手元にお金が残っていない」と気づくパターンが挙げられます。固定資産税の精算や諸費用の支払い、ローン残債の返済などは事前に把握していなければ資金計画が狂ってしまうこともあるため、注意が必要です。
この記事では、仲介営業マンの実務目線でトラブル事例をご紹介します。
「決済前日に慌てたくない」「手取り額や税金で後悔したくない」という方は、この記事を読みながら、ご自分の売却スケジュールと照らし合わせてチェックしてください。
この記事でわかること
- 売却経験者あるあるの後悔
- 防ぎたいトラブル事例
- 決済日までに必ず準備すべき書類と注意点
- 決済当日の具体的な流れ
- 決済日にかかる費用(3,000万円で売却=約70万円の費用が必要と計算するケース)
- 決済後の確定申告に備えて、今日から残しておくべき資料
決済当日に時間が押した具体的なトラブル事例、よくある不安Q&A

不動産の決済は、書類の不備などで予定より時間がかかることがあります。
ここでは、具体的なトラブル事例やよくある疑問について分かりやすく解説します。
トラブル事例1:実印・印鑑証明書を忘れた場合
不動産決済の当日、金融機関の応接室で、売主・買主・司法書士・仲介担当が揃い、いよいよ登記関係書類への捺印に入ります。
ここで売主がなんと、「実印・印鑑証明書の原本を持ってきていない」ことに気づきます。
不動産の所有権移転登記は、売主による実印での押印および印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)による本人確認が前提です。事前に登記関係書類へ捺印していない場合、実印がなければ登記手続きを進めることはできません。
そのため、決済手続きはその場でストップするのが一般的です。
融資実行や残代金の支払いも連動しているため、全体のスケジュールが大きく崩れる事態になります。
なお、仮に印鑑を持参していても、押印した印影が印鑑証明書の印影と異なるケースもあり、この場合も同様に手続きは止まります。
トラブル発生時の対応策
今回のケースでは、以下の対応策が挙げられます。
1.自宅へ取りに戻る・家族に届けてもらう
最も現実的な方法です。
時間に余裕があれば、実印と印鑑証明書を取りに戻ることで当日対応が可能です。印鑑証明書はマイナンバーカードがあれば、コンビニ交付で対応できる場合もあります。
2.印影相違があった場合の対応
もし持参した印鑑の印影が印鑑証明書と一致しなかった場合は、次の対応となります。
- 顔写真付き本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)がある:即日で印鑑の再登録ができる可能性があり。再登録後に改めて押印すれば、当日決済に間に合うことも。
- 顔写真付き本人確認書類がない:即日での印鑑再登録が不可、決済は延期。
つまり、印鑑トラブルは「その場で解決できるか」「延期になるか」で大きな分かれ目となります。
トラブルを防ぐための事前対策
このトラブルは事前準備でほぼ防げます。重要なポイントは以下の通りです。
1.持ち物の事前チェック
実印・印鑑証明書(原本)・本人確認書類が間違いなくあるかを、前日だけでなく、当日出発前にも再確認しましょう。
2.印鑑証明書・印影の事前共有
事前に司法書士へコピーを提出して内容や印影を確認してもらうと、当日のトラブルを防止できます。決済当日は必ず原本を持参します。
3.印影の事前確認
印鑑は登録している実印かどうか、欠けや摩耗がないか、他の印鑑と取り違えていないかなどをチェックしておきます。
よくある不安Q&A
Q. 実印を忘れた場合、その場で何とかできますか?
A. 距離や時間次第です。取りに戻る、または家族に届けてもらうことで間に合うケースもありますが、時間が足りなければ延期になります。
Q. 印鑑証明書を忘れた場合は?
A. 原本確認が必要なため、原則として当日中に取得・持参が必要です。マイナンバーカード(利用者証明用電子証明書が有効である)があればコンビニ交付で対応できる場合もあります。
Q. 印影が違った場合はどうなりますか?
A. 顔写真付き本人確認書類があれば即日で印鑑の再登録が可能です。
ただし、それが用意できない場合は即日対応ができず、決済延期となります。
トラブル事例2:印鑑証明書と登記簿の住所が一致しない
決済当日、売主が現在の住所で取得した印鑑証明書を提出したものの、登記簿謄本記載の住所が過去のままで一致していないことが判明。司法書士が本人同一性を確認できず、所有権移転登記が進められない状態になりました。
結果として手続きはその場でストップし、住所変更登記など追加対応が必要となり、決済スケジュールに大きな遅れが生じます。
トラブル発生時の対応策
このケースの基本的な対応策はこちらです。
1.住所変更登記を先に行う
現在の住所と登記簿謄本の住所が一致していない場合、まず行うべきは住所変更登記(所有者の住所変更)です。これにより、登記簿の住所を現住所に更新します。
2. 必要書類を追加取得
状況に応じて以下が必要になります。
- 住民票(住所のつながりを証明)
- 戸籍の附票(過去住所の履歴確認)
- 除籍の附票、改正原附票など
特に、旧住所から新住所のつながりが証明できない場合は、書類の追加取得に時間がかかります。なお、2019年6月20日施行の住民基本台帳法の改正により、住民票の除票および戸籍の附票の除票の保存期間は、従来の5年から150年へと大幅に延長されました。登記簿上の地名や地番が異なっている場合は、別途、住居表示実施証明書や地番変更証明書が必要になることもあります。
トラブルを防ぐための事前対策
このトラブルは、事前確認の有無でほぼ決まります。
1.登記簿の住所を事前確認
売却前に登記簿謄本を取得し、記載住所と現住所を比較します。違っていれば変更が必要です。
2.早めに住所変更登記を済ませる
引っ越し後、そのままにしているケースは多く見られますが、売却予定がある場合は事前に住所変更登記を完了させておきましょう。
3.住所の「つながり」を証明できる書類を準備
住民票だけで足りるか、附票が必要かなど、司法書士に事前確認しておきます。
なお、2026年4月から住所・氏名変更登記、2024年4月から相続登記が義務化され、いずれも過去分を含め、定められた期限内に申請する必要があり、正当な理由なく怠ると過料の対象となる可能性があります。
よくある不安Q&A
Q. 引っ越している場合、必ず住所変更登記が必要ですか?
A. はい。売却する場合は、登記簿の住所と印鑑証明書の住所が一致しない場合、原則として住所変更登記が必要です。
Q. 当日その場で対応できますか?
A. 書類が揃っていれば可能なケースもありますが、多くの場合は不足書類があり、決済延期になる可能性が高いです。
Q. どのくらい前に確認すればいいですか?
A. 遅くとも売却活動開始時、できれば査定・媒介契約の段階で確認するのが理想です。
住所変更登記は通常1週間程度かかるため、早めの確認が重要です。
トラブル事例3:権利証を紛失してしまった場合
決済時に、売主が権利証(登記識別情報通知)を持参していない、または権利証と間違って登記事項証明書(登記簿謄本)など別の書類を提出していました。登記事項証明書などは権利証ではないので登記申請には利用できません。
当日になって権利証の紛失が判明した場合でも、本人確認情報の作成などにより登記申請は可能ですが、事前準備が必要なため、その場で対応できるケースは少なく、結果として決済延期となる可能性が高くなります。
トラブル発生時の対応策
権利証を紛失した場合の対応は、当日では完結しないケースがほとんどです。
1.本人確認証明情報の作成(司法書士・弁護士などが対応)
司法書士が面談・書類確認を行い、本人確認証明情報を作成すると、権利証の代替として登記申請が可能です。事前準備が必要であり、当日対応は原則できません。
2.公証人による本人確認
公証人による売主の本人確認を行ってもらう方法もあります。
具体的には、売主が公証人の立会いのもとで登記申請の委任状などに署名・押印し、その書類が真正であることについて公証人の認証を受ける手続きとなります。
ただ、司法書士による本人確認情報の作成が安全かつ確実なため、利用されるのが一般的です。
トラブルを防ぐための事前対策
このトラブルも事前に司法書士などへ相談することでほぼ回避できます。
1.権利証の有無を早めに確認
売却検討時または媒介契約時にあるかどうかをチェックします。見当たらなければ即対応しましょう。
2.紛失していたら事前に代替手続き
司法書士に相談し、本人確認証明情報の作成を依頼します。
公証役場での認証手続きでも可能ですが、司法書士に依頼するほうが安全性が高いとみなされます。決済日より前に完了させておきましょう。
よくある不安Q&A
Q. 権利証をなくしたら売却できませんか?
A. 権利証は再発行できませんが、売却は可能です。本人確認証明情報などの代替手段がありますが、事前準備が必須です。
Q. 当日その場で何とかできますか?
A. 基本的には難しいでしょう。本人確認証明情報の作成には事前の面談や確認が必要なため、多くは延期になります。
Q. 権利証かどうか分からない場合は?
A. 司法書士に事前確認するのが確実です。全く別の書類であるケースもあります。
トラブル事例4:住民票を忘れた、マイナンバー記載済(受け取り不可)の住民票を持参した場合(住民票が必要な場合のみ)
いよいよ決済という段階で、売主が住民票を忘れた、あるいはマイナンバー記載済の住民票であるため登記手続きに使えなかったという事態が発生。
また、登記簿上の住所と現住所が異なる場合、住民票で住所のつながりを証明する必要がありますが、提出書類が不足したことで登記手続きが進まず、決済は一時中断となりました。
トラブル発生時の対応策
以下の対応策を行います。
1.役所またはコンビニで再取得
最も現実的な対応です。市区町村役場またはコンビニでマイナンバー未記載の住民票を再取得します。当日中の決済が可能なケースもあります。
2.追加書類を取得する
引越し回数によっては追加書類を取得します。
引越し1回は住民票で対応可能(前住所欄で確認)ですが、引越し2回以上の場合は戸籍の附票が必要です。
この場合、当日対応はほぼ不可能で延期になるケースが多いでしょう。
トラブルを防ぐための事前対策
トラブルを防ぐには、事前に確認しておくことが重要です。
1.「マイナンバーなし」で取得する
住民票を取得する際には、必ず「マイナンバーなし」であるかを確認しましょう。
2.住所履歴の事前確認
登記簿の住所と現住所を比較し、引越し回数を把握します。
提出書類が住民票以外に、戸籍の附票も必要であるかを事前に確認しておきましょう。
なお、2回以上引越しをしている場合は戸籍の附票が必要です。令和元年6月の法改正により、戸籍の附票は保存期間が150年間となりました。
3.書類の事前チェック(司法書士)
司法書士にあらかじめコピーを提出して、内容を確認してもらいます。
よくある不安Q&A
Q. マイナンバー付きの住民票はなぜダメですか?
A. 不要な個人情報が含まれるため、登記手続きでは使用できません。
Q. 当日その場で何とかなりますか?
A. コンビニ交付や近隣役所で取得できれば可能ですが、時間的に間に合わなければ延期になります。
Q. 住民票だけで足りますか?
A. 引越しが1回なら基本的に足りますが、2回以上の場合は戸籍の附票が必要です。
セーフ事例:固定資産税等納税通知書を忘れても問題ない
固定資産税分担金の計算に使うだけなので、必須というわけではありません。
また、固定資産税の納付書は6月頃に送付されるため、5月までの決済であれば、納付書が届いてからの請求となる場合もあります。
よくある不安Q&A
Q. 納税通知書を失くしてしまいました。どうすればいいですか?
A. 基本的には問題ありません。市区町村役場で「固定資産評価証明書」を取得すれば、それが公的な証明書として納税通知書の代わりになる場合があります。
Q. すでに全額納付済みなのですが、それでも精算は必要ですか?
A. はい。売主が1年分を納めていたとしても、引渡し日以降の分は買主の負担とするのが慣例です。引渡し日から年末(または年度末)までの日割り分を、売買代金とは別に「精算金」として買主から受け取ることになります。ただ、起算日(1月1日か4月1日か)は地域や契約内容によります。
心配な場合は司法書士や仲介担当にご相談してください。
決済当日・後日におけるその他のトラブル例
決済当日は書類の不備や手続きの遅れなど予期せぬトラブルが発生しやすく、スムーズな手続きを妨げる原因になります。
決済当日におけるその他のトラブル例として以下の事例が挙げられます。
【買主側による資金関連トラブル例】
| トラブル例 | 備考 |
| 買主による振込限度額の設定忘れ | 手付金や残代金が当日送金できず決済が1日遅れる |
| ローンの本審査がギリギリ | 承認が当日間に合わず、後日に日程調整する |
| 買主側の営業担当による段取り不足 | 書類・送金伝票・着金確認の段取りが悪く決済が長引く |
【書類・登記関連トラブル】
| トラブル例 | 備考 |
| 印鑑証明書や登記簿の氏名・住所不一致 | 登記変更手続きが必要 |
| 売主・買主の当日の欠席 | 代理人を立てる場合、委任状の不備や、代理人の権限不足でトラブルになる可能性 |
| 抵当権抹消書類が準備していない | 金融機関によっては書類の準備に3週間以上かかる場合もある |
【売主側の現地・物件関連トラブル】
| トラブル例 | 備考 |
| 設備表を正しく記載できていなかった | 当日の最終確認(現況確認)で、給湯器やエアコンが故障していることが発覚 |
| 瑕疵・地下埋設物などの告知漏れ | 売主が地下埋設物のような瑕疵にあたる要素の告知を怠っていた |
| 隣地との境界問題・測量図の未作成 | 隣地との境界トラブルが引き継がれるため決済時に買主が難色 |
【制度・税金関連トラブル】
| トラブル例 | 備考 |
| 住宅ローン控除と3,000万円控除の併用不可 | 3000万控除と次の新居購入後の住宅ローン減税は併用できない |
| 更地売却で住宅用地の特例が受けられない | 1月1日時点で建物がないと住宅用地の特例が受けられず、固定資産税が最大6倍に跳ね上がる |
| 所有期間を意識せずに決済日を設定 | 決済日がどの年になるかで「判定される1月1日」が変わる |
不動産決済のトラブルは、その多くが事前の確認で防げます。
次は、トラブルを避けるための対策について解説しましょう。
トラブルを避けるための対策
まずは決済の1週間前までに、印鑑証明書や権利証(登記識別情報)のコピーを司法書士に預け、印影や書類の内容に不備がないかチェックしてもらいましょう。当日は必ず原本を持参します。
特に過去に引っ越しをしている場合は、登記簿上の住所と今の住所のつながりを証明する書類(住民票や戸籍の附票)が何枚必要か、早めに特定して準備しておくのが鉄則です。
また、当日のハプニングを防ぐために買主は振込限度額の引き上げを、売主は設備の動作確認を、それぞれ決済の前日までに必ず済ませてください。当日になって「書類が足りない」「振り込めない」となると、銀行や法務局の受付時間の関係で当日中に対応するのは難しくなります。
銀行や司法書士と十分に連携し、振込手続きや抵当権抹消の準備は余裕を持って行います。
決済当日までに必要な書類・持ち物は?不動産決済日の延期で違約金発生は避けよう

不動産売買における「決済日」は、所有権移転と残代金の支払いを同時に行う重要な日です。必要書類や持ち物に不備があると決済の延期につながり、場合によっては違約金が発生するリスクもあるため、事前にしっかり準備を整えておく必要があります。
売主と買主が、それぞれ用意するものは下表の通りです。
【決済当日までに必要な書類・持ち物】
| 売主 | 買主 | |
| 必須のもの | ・権利証(登記済証・登記識別情報)・実印・印鑑証明書(発行から3ヵ月以内)・本人確認書類・物件の鍵一式・仲介手数料・司法書士報酬の残金(現金または振込) | ・住民票・実印・印鑑証明書(発行から3ヵ月以内)・本人確認書類・残代金・固定資産税清算金(※住宅ローン利用の場合は金融機関から実行されるため不要)・仲介手数料・登記費用 |
| 場合によって必要なもの | ・住民票・戸籍謄本(登記簿上の住所と現住所が異なる場合など)・固定資産評価証明書・引き渡すべき書類一式(設備の取扱説明書、保証書、購入時パンフレット、管理規約など)・残代金の着金確認ができるもの(通帳・キャッシュカードなど)・抵当権抹消書類(ローン残債がある場合)・売買契約書原本(任意売却の場合) | 送金に使用する通帳・印鑑・キャッシュカード(当日送金する場合) |
営業マンBさんによれば、「決済が延期になった事例の約8割は、住所や氏名の不一致、あるいは権利証だと思っていた書類が別物だったケースです」といった声があります。
こうしたミスを防ぐためにも、必要書類は遅くとも2週間前までに仲介担当者と一緒に確認しておくと安心です。
また、抵当権抹消に必要な書類は、金融機関での準備に通常2週間程度かかりますが、状況によってはそれ以上かかることもあります。直前になって慌てないよう、早めに手続きを進めておきましょう。
この手続きが間に合わないと、決済自体ができなくなる可能性もあるため、金融機関にスケジュールを確認しておくことが必要です。
| 【体験談】営業マンが一番ヒヤッとしたケース:印鑑証明の住所違いで決済が1週間延期に 一番ヒヤッとしたこと決済当日、書類確認の場で「登記簿の住所と印鑑証明の住所が違いますね…」と指摘が入りました。売主はすでに引越しを済ませており、新住所で印鑑証明書を取得していたのですが、登記簿上の住所は旧住所のまま。この状態では手続きを進めることができません。その場で住所変更登記を行うことはできず、司法書士と買主に事情を説明し、決済日を1週間延期させてもらうことになりました。 原因売却前に引越しをして住民票を移している場合、印鑑証明書も新住所で発行されます。しかし、登記簿上の住所が旧住所のままだと、そのままでは売却手続きに使用できません。この場合は事前に「住所変更登記」を行う必要があり、通常1週間〜10日程度(混雑時は2〜3週間)かかります。 一言アドバイス印鑑証明書は「登記簿上の住所と一致しているか」を必ず確認しましょう。あわせて、決済前に司法書士へ書類一式をチェックしてもらうと安心です。 |
不動産売却の決済当日の流れを6ステップで解説

不動産売買は何度経験しても、やはり一番緊張するのは「決済当日」です。
書類は事前に司法書士が確認し、送金方法や着金確認の流れも関係者とすり合わせているものの、「本当に問題なく終わるのか」という不安は残るものです。
特に印象的なのは、融資実行後に売却代金が口座に反映された瞬間です。
画面に金額が表示されたとき、「あ、本当にこの家とお別れなんだ」と実感する方も少なくありません。
最近ではネット銀行の利用も増え、対面での金銭消費貸借契約(いわゆる金消契約)がないケースもあり、「本当に振り込まれるのか」と不安に感じる声もあります。
決済当日の基本情報はこちらです。
【決済当日の基本情報】
日時:平日の午前中
場所:買主が住宅ローンを借りる金融機関
所要時間:1〜2時間程度
参加者:売主、買主、不動産仲介担当者、司法書士、金融機関担当者(売主・買主それぞれ)
ここでは、不動産売却の決済当日の流れを6ステップで解説します。
STEP1. 最終立会い(事前確認)
決済直前、または前日までに物件の最終確認を行います。
設備の不具合や残置物がないかをチェックし、引き渡しできる状態かを確認します。
通常は決済当日に行うのではなく、前日までに済ませておくケースが多く、当日は大きな問題がないことを前提に手続きが進みます。
特に「設備が残っているか」「不要な荷物が残っていないか」などはトラブルになりやすいため、気になる点があればこの段階でしっかり確認しておきましょう。
STEP2.本人確認・書類チェック
当日はまず、司法書士による本人確認と書類の最終チェックが行われます。
問題がなければ、所有権移転登記などを依頼するための委任状に署名・捺印します。
この本人確認の段階で、住所や氏名の不一致、印鑑の相違などが見つかると、その日の決済が進められないケースもあります。
事前にしっかり準備していても、ここで不備が発覚することは少なくないため、最終チェックの場として重要です。
STEP3.融資実行・登記手続き
司法書士が売主と買主の登記関連書類の確認を行った後、買主の住宅ローンが実行され、金融機関から売主へ資金が振り込まれます。
この瞬間が一番緊張するポイントで、「本当に振り込まれるのか」「トラブルなく完了するのか」と、関係者全員がソワソワする場面です。
資金の移動と同時に所有権移転の登記申請も行われるため、安全に取引が進む仕組みになっています。
なお、登記自体は当日申請され、完了は数日後となります。
手続き完了後、買主へ新しい登記識別情報が通知されます。
STEP4.残代金の支払い・各種精算
資金の移動が確認できたら、以下の支払い・精算を行います。
| 売主側 | 買主側 |
| ・住宅ローンの一括返済(残債がある場合)・登記費用・仲介手数料の支払い | ・残代金の支払い・固定資産税・都市計画税の精算・管理費・修繕積立金などの精算・登記費用・仲介手数料の支払い |
資金のやり取りと精算が完了すると、売主・買主双方の金銭的な手続きはほぼ終了です。
売主は住宅ローンの一括返済を行うことで抵当権が抹消されます。登記費用・仲介手数料の支払いを確認し、買主は残代金や諸費用の精算を行います。
日割り計算が必要な固定資産税や管理費もこのタイミングで調整され、すべての金額が確定します。すべての支払いが完了したら、領収書の受け渡しを行います。
金額や名義に誤りがないか、その場で確認しておきましょう。
STEP5.売主の抵当権抹消
売却物件に住宅ローンが残っている場合、決済後に売主の抵当権を抹消する手続きが必要です。抵当権とは、ローンの返済を担保するために金融機関が設定する権利で、抹消しないと買主が所有権を自由に使えません。
通常、この手続きは司法書士が代理で行うため、売主の金融機関担当者から抵当権抹消に必要な書類と委任状を受け取り、その後、所有権移転に必要な書類を司法書士に提出します。手続きが完了すると、抵当権が登記簿から抹消され、買主はローンの制約なしに物件を利用できる状態になります。
STEP6.鍵や必要書類の引き渡し
最後に、売主から買主へ鍵や必要書類を引き渡します。
この時点で物件の引き渡しが完了し、実質的に買主へ所有が移ります。
住宅ローンが残っている場合は、司法書士が抵当権の抹消手続きを進めます。
金融機関で着金が確認できれば、ひと通りの手続きは完了です。
なお、住宅ローンの関係で、買主は決済前に住民票を新住所へ移しておくケースが一般的です。
また、2025年以降は、住民票の異動情報をもとに法務局が住所変更登記を行う仕組みも始まっています。ただし、事前の手続きや条件があり、すべてのケースで自動的に適用されるわけではありません。
そのため、これまで必要だった2〜3万円程度の住所変更登記費用がかからない場合もありますが、個別の状況によるため事前に確認しておくと安心です。
決済当日は、事前準備さえ整っていれば、流れ自体はそれほど難しいものではありません。
とはいえ、「融資がきちんと実行されるか」「ちゃんと着金するか」といった場面では、どうしても緊張するものです。
当日に慌てないためにも、あらかじめ流れを把握しておき、書類や資金の準備は余裕をもって進めておきましょう。
| 【体験談】売却経験者が一番ヒヤッとしたケース(1):振込限度額の設定漏れで、全員を30分待たせた 一番ヒヤッとしたこと当日、買主側の口座から残代金を振り込む段階で、ネットバンキングの1日あたり振込限度額が100万円のままだったことが発覚。 その時の状況銀行窓口で限度額変更の手続きをしてもらう間、司法書士・不動産会社・売主・買主が全員、会議室でただ待つ時間が続き、空気がものすごく気まずくなりました。 一言アドバイス決済前日に『振込限度額が残代金+諸費用を超えているか』『自己資金分が口座に入っているか』を、担当者と一緒にチェックしておきましょう。 |
不動産売却の決済日には何を払う?

不動産売却では「3,000万円で売れたから、3,000万円が丸々手元に入る」わけではありません。実際に売却経験者の中には「想定より通帳の残高が少なくて驚いた」という方もいます。
原因は、売却にかかる諸経費やローン関連の手数料、精算金の見落としです。入金される金額(融資実行額)から、銀行の手数料などが事前に引かれるケースもあるため注意が必要です。
売買にかかる費用は、売却価格の5%程度を見込んでおきましょう。
タイミング別に解説します。
売買契約締結時
契約書を交わす段階で、現金で用意しておくべき費用があります。
- 印紙代(契約書に貼付):3,000万円の売買なら1万円程度(令和9年3月31日まで)
- 仲介手数料の半額:不動産会社によりますが、契約時に上限額の50%を支払うケースが一般的
なお、この時点で、買主から手付金として売却価格の5〜10%程度を現金で受け取ります。
決済(引渡し)時
最もお金が動き、想定外の出費を感じやすいタイミングです。
- 仲介手数料(残りの半額): 約53万円(3,000万円売却の場合)
- 住宅ローンの繰り上げ返済手数料: 3万〜5万円程度
- 抵当権抹消・住所変更費用: 司法書士への報酬や登録免許税で約5万〜8万円
- 清算金(固定資産税・管理費など): 引渡し日を境に日割り計算
これらの費用は売却代金から差し引かれるため、手元に残る金額は想定より少なくなることがあります。
後日にかかる費用
不動産売却では、決済が完了した後にも税金や各種費用の支払いが発生します。
- 譲渡所得税・住民税(利益が出た場合、翌年の確定申告)
- 確定申告の税理士費用(依頼した場合):3万~25万円程度
- 解体費用(売却条件として更地渡しや残置物撤去がある場合):木造の場合で90~120万円程度
- 引越し費用:20万円程度(4人家族)
これらの費用は決済後に発生するため見落とされがちですが、事前に把握しておかないと資金計画に影響します。
【参考例】3,000万円で売却した場合の決済日に支払う諸費用の額
3,000万円で不動産を売却した場合で、決済日に支払う費用をシミュレーションしてみましょう。
条件は以下の通りです。
- マイホームの売却
- 居住用3,000万円控除の特例を利用するので譲渡所得税は非課税
- 仲介手数料の半額は売買契約時に支払済み
- 住宅ローン利用中
- 印紙代は売買契約時に支払済み
費用の内訳例はこちらです。
【3,000万円で売却した場合の決済日に支払う諸費用の一例】
| 費用 | 内容 | 金額目安 |
| 仲介手数料(半額) | (3000万×3%+6万)×消費税の半額 | 約53万円 |
| 抵当権抹消登記費用 | 登録免許税+司法書士報酬 | 登録免許税:不動産1個につき1,000円(土地+建物なら2,000円)司法書士報酬:約3万円日当・交通費:約1万円 |
| 住所・氏名変更登記費用※必要な場合 | 登録免許税+司法書士報酬 | 登録免許税:不動産1個につき1,000円(土地+建物なら2,000円)司法書士報酬:約2万円 |
| 住宅ローンの繰上げ返済手数料 | 3万円〜5万円程度 | |
| 合計目安 | 約70万円前後 |
このように、3,000万円で売却しても、決済時には諸費用として約70万円前後の支払いが発生する見込みです。それに加えて、住宅ローンの残債を支払う必要があります。
そのため、住宅ローン残債が2,000万円の場合、3,000万円が入金されても、諸費用とローン返済後に残る金額は約930万円です。
現在の住まいを売却後に住み替え先を購入する場合は、ローン残債の他に、決済時にかかる諸費用の支払分を忘れないようにしましょう。資金計画を立て直す可能性があります。
なお、固定資産税・都市計画税・管理費・修繕積立金などの精算金を、買主から受け取れるケースがあり、その分はプラスとなります。
「3,000万円で売れたのに、通帳に残ったのは想定より200万円少なかった。原因は、固定資産税と管理費の精算をちゃんと見ていなかったことでした」(売却者インタビューCさん)
融資実行の時に、手数料(手数料型と保証型があり、手数料型だと2.2%とか)ひかれるので、資金を入れとかないといけない借り入れ金額=当日入金できる金額ではない ということに注意
| 【体験談】売却経験者が一番ヒヤッとしたケース(2):手取りが思ったより70万円少なくて青ざめた 一番ヒヤッとしたこと3,000万円で売れたので、『ローン差し引きで1,000万円くらい残るはず』と思い込んでいましたが、決済日の残高を見たら930万円しか残っていませんでした。 原因仲介手数料、司法書士報酬など、細かいお金をちゃんと足し合わせていなかったのが原因です。 一言アドバイス売買契約を締結する前までには営業担当に「決済当日に出ていく金額のシミュレーション表」を必ず出してもらい、自分でも電卓を叩いて確認すると安心です。 |
不動産決済の落とし穴、注意点

不動産決済には、知らなければ損をする落とし穴や注意点が潜んでいます。
たとえば、以下のようなポイントです。
| 項目 | 内容 | 対応策 |
| 固定資産税・都市計画税の精算起算日 | 起算日が関東では1月1日、関西では4月1日となる慣習がある | 精算額に差が出るため事前に起算日を確認 |
| 登記費用の負担 | 通常、項目ごとに負担者が決まっている(売主:抵当権抹消、買主:所有権移転など) | 売買契約書で合意があれば折半も可能 |
| 税金の特例ミス | 「3,000万円特別控除」は、親族間売買や居住実態がない空き家などは対象外 | 適用要件を確認しておく |
| 火災保険の返戻金 | 旧来の長期契約(35年など)は解約で返金される可能性がある | 自己申告制のため、引渡し後に遡って手続きを行い回収 |
不動産の売却は決済が終わったあとに、「思ったより手元に残らなかった」と感じることが少なくありません。原因の多くは、慣習的なルールや手続きの見落としにあります。
たとえば固定資産税の精算は、地域や慣習によって起算日が異なるため、事前に確認しておかないと想定とズレが出ることがあります。また、登記費用の負担は原則ルールがありますが、内容を変更する場合は必ず契約書で明確にしておく必要があります。
意外と見落としやすいのが火災保険の解約返戻金です。こちらは自動で返金されるわけではなく、自分で解約手続きをしないと受け取れないことがあります。
こうした細かな確認の積み重ねが、最終的に残る金額にそのまま影響します。
6回売買を経験した仲介営業マンのToDoチェックリスト

不動産売買を6回経験した仲介営業マンによる、ToDoチェックリストはこちらです。
【決済1ヶ月前】
| 項目 | 内容 | |
| □ | 一括繰上返済申請(売主) | 金融機関へローン完済の事前申請 |
| □ | 精算金の試算 | 固定資産税・管理費など日割り計算 |
| □ | 振込先口座の確認 | 売却代金の入金口座を確定 |
【決済1週間前】
| 項目 | 内容 | |
| □ | 司法書士との書類確認 | 印鑑証明・権利証・本人確認書類など |
| □ | 銀行へ当日の流れ説明・振込限度額の確認 | ローン完済・振込の流れ共有振込限度額の引き上げ設定(住宅ローン残債を完済する場合) |
| □ | 必要書類の最終チェック | 不備がないか確認 |
【前日】
| 項目 | 内容 | |
| □ | 当日の持ち物リマインド | 実印・本人確認書類・通帳など |
| □ | 集合時間・場所確認 | 司法書士・買主・銀行の再確認 |
【決済当日】
| 項目 | 内容 | |
| □ | 決済15分前集合 | 余裕を持って現地集合 |
| □ | 書類確認・署名押印 | 司法書士の指示に従い手続き |
| □ | 残代金入金確認 | 売却代金の着金確認 |
| □ | ローン完済手続き | 銀行へ一括返済実行 |
| □ | 仲介手数料の支払い | 領収書をもらい、確定申告に備える |
| □ | 司法書士への支払い | 領収書をもらい、確定申告に備える |
【決済後】
| 項目 | 内容 | |
| □ | 管理組合へ名義変更届 | マンションの場合は必須 |
| □ | 登記完了書類の受領 | 司法書士から受領 |
| □ | 鍵・書類引渡し完了確認 | 引渡し最終チェック |
不動産売却の決済は、当日の手続き以上に事前の段取りが成否を分けます。
まず1ヶ月前には、銀行への一括返済の予約や日割り精算金の試算を済ませ、お金の流れを固めておきます。1週間前になったら、書類の不備がないか司法書士と最終確認を行い、振込限度額の引き上げも忘れず設定してください。
当日は入金確認からローン完済、各種支払いが一気に進むため、現場はかなり慌ただしくなります。決済後は管理組合への届け出や火災保険の解約まで済ませて、ようやく一区切りです。準備不足で当日バタバタすると、最悪、引き渡しが延期になる恐れもあるため、早め早めに確認しておきましょう。
まとめ:「自分の家がいくらで売れそうか」ざっくりした数字を把握しよう

不動産の決済日は書類が1枚足りないだけで決済延期による違約金リスクや、思っていたより手元に残らないといった後悔につながります。
まずは「自分の家がいくらで売れそうか」「売却後にどれくらい手元に残りそうか」のざっくりした数字を把握しましょう。
手元に残る金額を確認することで、「決済日にいくら用意すべきか?」「次の住まいにどれだけ回せるか」「税金や諸費用を含めて損をしないラインはいくらか」などを判断できます。
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- 今の想定売却価格
- ローン残債を差し引いた想定手取り額
- 近隣の売買事例
まずはあなたも「自分のマンションがいくらで売れ、いくら手元に残るか」を一度シミュレーションしてみてください。