買主から購入申込が入り、価格や条件の交渉がまとまると、いよいよ売買契約に進みます。
ここまで進むと「もう売れた」と感じやすいものですが、契約当日やその後の手続きを前に、
- 契約当日は何を準備するの?
- 手付金はいつ受け取るの?
- 契約したら必ず売れるの?
- 引渡しまで何をすればいいの?
と不安になる方も少なくありません。
不動産売却は、売買契約を結んだ時点で終わりではありません。契約後も、住宅ローンの完済準備、抵当権抹消、引越し、残置物の整理、決済・引渡しなど、売主が進める手続きが続きます。
本記事では、売買契約当日の流れや準備物、契約後から引渡し・入金までに売主が進めることを時系列で解説します。
※注記
本記事は、個人の売主が不動産会社の仲介を通じて、個人の買主と売買契約を結ぶ一般的なケースを前提にしています。物件の種類、契約条件、売主・買主の事情によって必要書類や手続きは変わるため、実際の進め方は不動産会社や司法書士にも確認をするといいでしょう。
売買契約は「売却のゴール」ではなく「成功への通過点」
売買契約日は、売主と買主が、引渡しまでの条件を契約書で確認し、正式に約束する日です。
契約日を境に、売主の行動は「買主を探す」ことから「約束どおりに引き渡す」ことへ変わります。以降は、引越し、住宅ローン完済、必要書類の準備を決済日から逆算して進める段階です。
この段階で確認するのは、売買代金や手付金だけではありません。引渡し日、残置物、契約不適合責任、解除条件など、決済・引渡しまでの前提になる項目も契約書で確認します。
契約が終わってもまだ売却は完了していない
売買契約は、購入申込と条件交渉のあと、決済・引渡しの前に行う手続きです。売却活動の中では大きな区切りですが、まだ売却完了ではありません。

図のとおり、売買契約のあとには決済・引渡しが残っています。契約書に署名押印しても、まだ残代金の入金や所有権移転、鍵の引渡しは終わっていません。
そのため契約後も、引渡しに向けて必要書類や引越し、ローン完済の準備を進める必要があります。
特に自宅を売却する場合は、契約後に引越しや不用品処分、住宅ローン完済の手続きが重なりやすくなります。契約が終わった安心感で動きが遅れると、決済・引渡し直前に慌てる原因になります。
契約内容を確認したら、次は引渡し日から逆算して、いつまでに何を終える必要があるかを不動産会社と確認しておきましょう。
売買契約書の条項を詳しく確認したい場合は、契約書の見方を解説した記事も参考になります。
関連記事:2025年11月更新|不動産の売買契約を理解しよう
契約日が重要な理由
売買契約日は、売却活動の中でも大きな区切りになります。理由は、次の4つです。
- 買主の購入意思が正式に確定する
- 手付金を受け取れる
- 引渡し日が決まる
- 売却スケジュールが見える
一方で、手付金を受け取ったからといって、必ず最後まで進むとは限りません。契約書には、手付解除、住宅ローン特約による解除、契約違反による解除などが定められていることがあります。
そのため売主は、契約日に「署名押印して終わり」と考えるのではなく、契約内容を理解したうえで、引渡しまでの予定を具体的に確認しておきましょう。
売買契約当日までに準備するものチェックリスト
売買契約当日に必要なものは、不動産会社や物件の種類によって変わります。契約当日に慌てないために、売主が用意する書類と、契約前に確認しておきたいポイントを押さえておきましょう。
契約当日に初めて探すと間に合わない書類もあるため、購入申込が入り、契約予定日が見えてきた段階で不動産会社に確認しておくとスムーズです。
あわせて、契約時や決済時に必要な費用や支払い方法も事前に把握しておきましょう。売買契約書に貼付する印紙、仲介手数料の支払いタイミング、手付金の受け取り方法などは、不動産会社や契約内容によって扱いが異なります。
売主が準備するもの
契約当日までに用意しておきたい書類から確認しましょう。
▼必須書類
売買契約や決済・登記手続きまでに必ず必要となる書類は以下です。
- 本人確認書類
- 実印
- 印鑑証明書
- 登記識別情報
契約日にすべて原本を持参するか、決済日までに用意すればよいかは、事前に不動産会社へ確認しておきましょう。
本人確認書類は、運転免許証やマイナンバーカードなど、本人確認に使えるものを用意します。実印と印鑑証明書は、契約書や登記関係の手続きで必要になることがあります。
登記識別情報は、以前の「権利証」にあたる書類です。所有権移転登記に関わる大切な書類で、紛失していると司法書士による本人確認情報の作成など、追加の手続きが必要になる場合があります。契約直前ではなく、早めに保管場所を確かめておきましょう。
また、登記簿上の住所と現住所が異なる場合は、住民票や戸籍の附票など、住所のつながりを確認する書類が必要になることがあります。共有名義の場合は、共有者全員の本人確認書類や実印、印鑑証明書が必要になる点にも注意が必要です。
▼あるとスムーズな書類
必須書類ではありませんが、物件の状況や管理内容を説明するときに役立つ書類もあります。手元にある場合は、あわせて準備しておきましょう。
- 固定資産税通知書
- 管理規約
- パンフレット
- 修繕履歴
固定資産税通知書は、固定資産税・都市計画税の清算に使われます。マンションの場合は、管理規約、使用細則、長期修繕計画、管理費・修繕積立金の情報も確認されやすい資料です。
戸建てや土地では、測量図、境界確認書、建築確認済証、検査済証、設備の取扱説明書、修繕履歴などがあると、買主への説明や引渡し準備がスムーズになります。
すべてを売主だけで判断する必要はありません。不動産会社から「契約日までに必要なもの」「決済日までに必要なもの」を分けて聞いておくと、準備漏れを防ぎやすくなります。
▼契約前に確認したいポイント
書類の準備とあわせて、契約内容に関わる条件も事前に確認しておきましょう。
- 売却価格
- 引渡し日
- 残置物
- 契約不適合責任
売却価格はもちろん、手付金の額、残代金の支払日、引渡し日、固定資産税などの清算方法も、契約前に確認しておきたいポイントです。
残置物は、後から揉めやすい項目です。エアコン、照明、カーテン、家具、物置、庭木などについて、残すものと撤去するものを設備表や契約書で明確にしておく必要があります。
契約不適合責任は、引渡し後に雨漏りや設備不具合などが見つかった場合に、売主が責任を問われることがある仕組みです。どの範囲まで責任を負うのか、期間はいつまでか、知っている不具合は告知書や設備表に反映されているかを確認しましょう。
この段階で曖昧にしないほうがよいのは、売買代金や清算金、引渡し日、残置物の扱い、契約不適合責任の範囲です。どれも契約後に変更しようとすると、買主との再調整が必要になりやすいため、契約前に不動産会社と確認しておきましょう。
契約不適合責任の考え方を詳しく確認したい場合は、基本を解説した記事も参考になります。
売買契約当日は何をする?所要時間と流れ
売買契約当日は、不動産会社の事務所などで行われるのが一般的です。近年は、オンラインによる重要事項説明(IT重要事項説明)や電子契約を利用するケースもありますが、売主が確認すべき内容は大きく変わりません。
不動産会社が仲介する売買では、重要事項説明、売買契約書の確認、署名押印、手付金の受領、今後のスケジュール確認という流れで進むのが一般的です。オンラインで手続きする場合も、何に同意し、いつ引き渡すのかを売主自身が確認する姿勢は同じです。
オンラインによる重要事項説明や書面の電子化については、国土交通省の案内でも説明されています。
出典:国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bf_000013.html

所要時間は1〜2時間程度が一般的
契約当日の所要時間は、事前に書類を確認していれば1〜2時間程度が目安です。重要事項説明や売買契約書を当日初めて読む場合は、質疑応答も含めて時間が延びることがあります。
できれば契約日前に、重要事項説明書案や売買契約書案を不動産会社から共有してもらい、疑問点をメモしておきましょう。当日は、初見で理解する場ではなく、事前に確認した内容を最終確認する場にできると安心です。
ステップ1 買主との顔合わせ
売主と買主が同席する場合は、最初に挨拶を交わします。買主が先に重要事項説明を受け、売主が途中から合流するケースもあります。
▼第一印象は意外と重要
不動産売買は、契約後も決済・引渡しまでやり取りが続きます。顔合わせの場で売主が落ち着いて受け答えできると、買主にとっても「この人となら最後まで確認しながら進められそうだ」という安心材料になります。
第一印象で大切なのは、愛想よく振る舞うことだけではありません。設備の状態、残置物、引渡しまでの使い方などを聞かれたときに、分かることと確認が必要なことを分けて答える姿勢も、後日のトラブル防止につながります。
当日は、買主から「このエアコンは残りますか」「給湯器はいつ交換しましたか」「隣地との境界はどこですか」といった質問が出ることもあります。すぐに答えられない場合は、その場で曖昧に返さず、不動産会社を通じて確認してから回答しましょう。契約書、設備表、物件状況等報告書の内容とずれないようにしておくことが大切です。
ステップ2 重要事項説明
不動産会社が仲介する売買では、宅地建物取引士が買主に対して、物件や取引条件の重要な内容を説明します。これが重要事項説明です。
▼売主も確認しておきたい事項
重要事項説明は買主保護のための手続きですが、売主にとっても「自分が売る物件と条件が、書面上どう説明されているか」を確認する場になります。
特に確認すべき項目は、次のとおりです。
- 境界
- 管理費
- 修繕積立金
- 法令制限
土地や戸建てでは、境界、越境、私道負担、再建築の可否などが重要です。マンションでは、管理規約、使用細則、管理費・修繕積立金、滞納の有無、長期修繕計画などが確認されます。
売主自身が知っている雨漏り、シロアリ、設備故障、近隣トラブル、過去の修繕履歴などがある場合は、物件状況等報告書や設備表に正しく反映されているかを確かめておきましょう。
たとえば、マンションの管理費や修繕積立金が古い金額のままになっていたり、戸建ての越境や境界の説明が売主の認識と違っていたりすると、契約後に買主から追加説明を求められることがあります。重要事項説明は買主のためだけでなく、売主が「この内容で売る」と確認する場でもあります。
事前に書類案を受け取れる場合は、気になる点を書き出し、不動産会社に伝えておきましょう。契約当日に初めて気づくよりも、事前に修正・確認しておくほうが、当日慌てずにすみます。
重要事項説明書の内容や役割をもう少し詳しく知りたい場合は、こちらの記事も参考になります。
関連記事:不動産の「重要事項説明書」|内容・役割・説明のタイミングについて紹介
ステップ3 売買契約締結
重要事項説明の内容を確認した後、売買契約書の読み合わせに進みます。売買契約書は、売主と買主の約束を明文化する書類です。
▼ここで確認すべき5項目
売買契約書では、特に次の5項目を確認しておきましょう。金額、日付、責任範囲、契約をやめる場合の条件は、契約後の動きに直接関わります。
- 売買代金
- 手付金
- 引渡し日
- 契約不適合責任
- 解約条件
売買代金は、総額だけでなく、手付金と残代金に分けて確認します。残代金は通常、決済・引渡し日に支払われます。
引渡し日は、売主の引越しや住宅ローン完済、抵当権抹消の準備に直結します。住み替えの場合は、次の住まいへの入居日と無理なくつながるか確認しておきましょう。
契約不適合責任は、引渡し後に雨漏りや設備不具合などが見つかった場合に、売主がどこまで責任を負うかに関わる項目です。責任を負う範囲や期間、すでに把握している不具合が告知書や設備表に反映されているかを確認しましょう。
解約条件では、手付解除の期限、住宅ローン特約の期限、契約違反時の違約金、契約不適合責任による解除の扱いなどを確認します。ここを曖昧にしたまま署名押印すると、契約後に予定が崩れたときの対応で揉めやすくなります。
契約後の解除リスクを詳しく知りたい場合は、解除条件をまとめた記事も参考になります。
関連記事:不動産売買契約は解除される?代表的な10パターンと解除予防策
ステップ4 手付金の受領
売買契約を締結すると、買主から売主へ手付金が支払われます。支払い方法は、現金、振込、預金小切手など、契約内容や不動産会社の運用によって異なります。
▼手付金を受け取ると何が変わる?
手付金を受け取ることで、買主の購入意思はより明確になります。売主にとっては、売買契約が成立したことを実感しやすいタイミングです。
ただし、手付金は「受け取ったら自由に使ってよいお金」とは考えないほうが安全です。
買主の住宅ローンが通らず、ローン特約によって契約が白紙になる場合、売主は受け取った手付金を返還することになります。また、手付解除の期限内であれば、買主が手付金を放棄して解除する可能性もあります。
手付金を受け取ったら、領収書の扱い、振込確認、保管方法も不動産会社に聞いておきましょう。決済・引渡しが終わるまでは、返還の可能性が残るお金として分けて考えておくと安心です。
契約後から引渡しまでにやること
売買契約が終わったら、売主は決済・引渡し日に向けて準備を進めます。ここを後回しにすると、契約は成立しているのに引渡しが遅れる、必要書類がそろわない、残置物が残るといったトラブルにつながります。
契約後から引渡しまでの期間は、一般的に1〜2か月程度になることが多いものの、買主の住宅ローン審査、売主の住み替え、抵当権抹消の段取りによって変わります。
大まかに分けると、契約直後は「日程と必要書類の確認」、決済日が近づいたら「退去・残置物整理・金融機関手続きの仕上げ」が中心です。何となく準備を始めるよりも、決済日から逆算して動くほうが、抜け漏れを防ぎやすくなります。
①引越し準備を始める
自宅を売却する場合、引渡し日までに退去できるよう、引越しの予定を組みます。
ここでいう引渡しは、買主へ鍵を渡し、物件を使える状態にすることです。明渡しは、売主が荷物を運び出し、買主へ引き渡せる状態にしておくことを指します。
注意したいのは、決済・引渡し日は「鍵を渡す日」でもあることです。売主の荷物が残っていたり、引越しが終わっていなかったりすると、買主は予定どおり入居できません。
通常は、決済・引渡し日までに売主が退去し、荷物を片づけた状態で買主へ鍵を渡します。住み替え先の入居日が決まっていない場合は、この日程に無理が出ないよう、契約前の段階で引渡し時期を調整しておきましょう。
どうしても決済後もしばらく住み続ける必要がある場合は、口約束ではなく、引渡し猶予などの特約として契約書に明記する必要があります。
特に自宅売却では、契約が決まってから引越し会社を探すと、希望日に予約できないことがあります。繁忙期や土日祝に引渡し前の退去を予定している場合は、契約日を待たずに、見積もりや不用品処分の段取りだけでも進めておくと、直前で慌てずに済みます。
②住宅ローン完済手続きを進める
売却する家に住宅ローンが残っている場合は、決済日に一括返済と抵当権抹消ができるよう、事前に準備を進めます。
抵当権とは、住宅ローンを貸している金融機関が、物件を担保にしている権利です。買主へ物件を引き渡すには、通常、決済日に買主から受け取る残代金を使って住宅ローンを完済し、抵当権を抹消できる状態にしておく必要があります。
契約後は、金融機関に一括返済の予定を伝え、必要書類や手続きにかかる日数を確認します。金融機関の手続きが遅れると決済日に間に合わないことがあるため、不動産会社や司法書士と連携しながら早めに動きましょう。
売主が自分で金融機関に連絡する必要があるケースもあれば、不動産会社や司法書士が段取りを案内してくれるケースもあります。いずれにしても、「決済日が決まったら誰に何を連絡するのか」を契約後すぐに確認しておくと、直前の慌ただしさを減らせます。
住宅ローン残債がある家の売却について詳しく確認したい場合は、次の記事も参考になります。
関連記事:住宅ローン残債があっても家は売れる?損しない自宅の売却方法4つと注意点
③必要書類を集める
決済・引渡し日には、契約日とは別に必要になる書類があります。代表的なものは次のとおりです。
- 印鑑証明書
- 住民票
- 登記識別情報
- 固定資産税関係資料
- 金融機関の抵当権抹消書類
印鑑証明書は発行から3か月以内のものが求められることが多いため、早く取りすぎると決済時に期限切れになる場合があります。取得のタイミングは、不動産会社や司法書士に確かめておきましょう。
また、鍵、管理規約、設備の取扱説明書、保証書、パンフレット、修繕履歴など、買主へ引き継ぐ資料もまとめておくと、引渡し当日の混乱を防げます。
書類は「持っているはず」と思っていても、いざ探すと見つからないことがあります。登記識別情報、固定資産税通知書、マンションの管理規約、設備の保証書などは、契約後すぐに保管場所を把握しておきましょう。
④買主から追加確認が来ることもある
契約後、買主から設備や管理状況、引渡し時の状態について追加で確認が入ることがあります。
たとえば、
- エアコンは残すのか
- 照明は撤去するのか
- 給湯器に不具合はないか
- マンションの管理費や修繕積立金に変更予定はあるか
- 引渡し前に室内確認はできるか
といった内容です。
口頭で答えるだけでなく、不動産会社を通じて記録に残る形で確認するのが安全です。特に設備や残置物は、契約書や設備表の内容と矛盾しないようにしましょう。
契約後によくあるトラブルと対策
売買契約後のトラブルは、すべてを売主だけで防げるわけではありません。ただ、契約前の確認と契約後の準備で、起きにくくできるものはあります。
この章では、契約後に起こりやすいトラブルと、売主ができる対策を紹介します。契約解除や契約不適合責任そのものの詳しい仕組みは、関連記事で確認できます。
①契約したのに住宅ローン審査が通らない
買主が住宅ローンを利用する場合、契約後に本審査へ進むのが一般的です。住宅ローンを利用する売買では、ローン審査に通らなかった場合に契約を白紙解除できる「ローン特約」が付くことが多くあります。この特約がある場合、本審査で承認が得られないと契約が白紙になることがあります。
売主としては、契約前に買主の事前審査の有無、借入予定額、金融機関名、ローン特約の期限を不動産会社に確認しておきましょう。
契約後は、ローン承認期限までの進捗を不動産会社に確認し、引越しや住み替えの準備を一気に進めすぎないよう注意が必要です。
特に住み替えを予定している場合は、買主のローン承認前に次の住まいの契約や引越し手配まで進めてしまうと、予定が崩れたときの負担が大きくなります。
②契約不適合責任で揉める
引渡し後に雨漏り、シロアリ、給排水管の不具合、設備故障などが見つかると、契約不適合責任が問題になることがあります。
売主ができる対策は、知っている不具合を隠さず、物件状況等報告書や設備表に反映しておくことです。古い設備や不具合のある設備については、契約書上の扱いも確認しましょう。
「古いけれど使えている」「以前に一度だけ不具合があった」といった状態も、買主との認識がずれやすいポイントです。迷う場合は自己判断で省かず、不動産会社に伝えたうえで書面に残すかどうかを相談しましょう。
③引渡し時期がずれる
売主の引越しが間に合わない、住み替え先の引渡しが遅れる、住宅ローン完済や抵当権抹消の書類が間に合わないといった理由で、引渡し時期がずれることがあります。
引渡し日は契約書で定める重要な条件です。売主都合で遅れると、契約違反や違約金の問題につながる可能性があります。
不安がある場合は、契約前に余裕のある引渡し日を設定し、契約後は金融機関、司法書士、引越し業者との予定を早めに押さえましょう。
引渡しの遅れは、買主の引越し、住宅ローン実行、賃貸の退去予定にも影響します。売主側の事情で日程変更が必要になりそうな場合は、早い段階で不動産会社に相談し、買主との調整を進めましょう。
④残置物トラブル
残置物とは、売主が物件内に残していく家具、家電、荷物、庭木、物置などのことです。
「これは使えると思って残した」「買主が使うと思った」という売主側の判断が、買主にとっては不要物になることがあります。撤去費用をめぐって揉めることもあるため、残すものと撤去するものは契約前に確認しておきましょう。
設備表には、残す設備、撤去する設備、不具合の有無をできるだけ具体的に記載します。迷うものがあれば、不動産会社を通じて買主に確認するのが安全です。
契約後に処分するものが多い場合は、引越しとは別に不用品回収の予定も押さえておきましょう。大型家具や物置、庭木などは直前に対応しにくいため、契約後すぐに確認しておくとスムーズです。
売却代金はいつ入る?
売主にとって特に気になるのが、売却代金の入金タイミングです。
不動産売却では、売買代金が一度に全額入るわけではなく、契約時の手付金と、決済時の残代金に分かれるのが一般的です。

手付金は契約時に受け取る
手付金は、通常、売買契約時に買主から売主へ支払われます。
金額は契約内容によって異なりますが、売買代金の5〜10%程度が目安とされています。手付金は最終的に売買代金の一部に充当され、決済時には売買代金から手付金を差し引いた残代金を受け取る流れになります。
ただし、ローン特約による白紙解除などが起きた場合、受け取った手付金を返さなければならない場合があります。決済が終わるまでは、手付金を使い切らず、返還が必要になる可能性も見込んでおきましょう。
残代金は決済・引渡し日に受け取る
残代金は、決済・引渡し日に受け取ります。
決済日には、買主から売主へ残代金が振り込まれ、同時に所有権移転登記、抵当権抹消、鍵の引渡しなどが進みます。買主が住宅ローンを利用する場合は、買主側の金融機関で決済を行うこともあります。
売主に住宅ローン残債がある場合は、受け取った残代金を使ってローンを完済し、抵当権を抹消します。そのため、売買代金の総額がそのまま手元に残るわけではありません。
仲介手数料や税金を差し引いた手残り額を確認しよう
売却代金を考えるときは、「入ってくるお金」と「出ていくお金」を分けて見る必要があります。売買代金の総額だけを見ると、実際に手元へ残る金額を見誤りやすくなります。
▼入ってくるお金
- 手付金
- 残代金
- 固定資産税・都市計画税などの清算金
▼出ていくお金
- 仲介手数料
- 印紙税
- 住宅ローン一括返済額
- 抵当権抹消費用
- 司法書士報酬
- 引越し費用
- 不用品処分費用
- 譲渡所得税が発生する場合の税金
「思ったより残らない」と感じるケースの多くは、売買代金だけを見て、ローン返済や諸費用を差し引いた後の手残りを確認していないことが原因です。
たとえば、売買代金が4,000万円でも、住宅ローン残債が2,800万円あり、仲介手数料や登記費用、引越し費用などがかかる場合、手元に残る金額は4,000万円を大きく下回ります。さらに譲渡所得税が発生するケースでは、売却後の税金も見込んでおく必要があります。
売買契約前後の段階で、少なくとも「売買代金」「住宅ローン残債」「売却費用」「税金の可能性」を並べて、概算の手残り額を確認しておきましょう。住み替えを予定している場合は、この手残り額が次の住まいの購入資金や引越し費用に直結します。
税金は所有期間や取得費、特例の有無によって変わります。無理に税額を断定せず、税理士や税務署に確認する前提で、まずは「発生する可能性がある費用」として見込んでおくのが現実的です。印紙税や譲渡所得税の詳細は、国税庁の「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」や「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」も確認しておくと安心です。
仲介手数料や譲渡所得税をもう少し詳しく知りたい場合は、次の記事も参考になります。
関連記事:不動産売却時にかかる仲介手数料はいくら?計算方法や注意点を徹底解説
売却成功を左右するのは契約後
売買契約まで進むと、売却活動の大きな山を越えたように感じるかもしれません。
しかし、売主にとって大切なのは、契約後に決済・引渡しまで滞りなく進めることです。契約後の準備が遅れると、最後の段階で買主との再調整が必要になることがあります。
契約後は、買主のローン審査、売主の引越し、金融機関や司法書士との調整が同時に進みます。売主だけで抱え込まず、不動産会社と進捗を共有しながら進めることが、スムーズな引渡しにつながります。
契約後の準備がスムーズな引渡しにつながる
契約後に特に意識したいのは、次の3つです。
- 必要書類の準備
- 引越し計画
- ローン完済準備
必要書類は、契約日ではなく決済日に必要になるものもあります。引越し計画は、引渡し日から逆算して進めます。ローン完済準備は、金融機関や司法書士との調整が必要になるため、売主だけで抱え込まず、不動産会社に進捗を確認しながら進めましょう。
だからこそ売却活動のスタート時点が重要
売買契約後に慌てないためには、売却活動のスタート時点で、価格とスケジュールの見通しを持っておくことが大切です。
いくらで売れそうか、住宅ローン残債を返せるか、引越しや住み替えにどのくらい時間が必要か、最終的にどのくらい手元に残るか。こうした見通しがあると、購入申込が入ったときの判断や、売買契約後の準備が進めやすくなります。
売買契約の直前になってから「ローンを返せるのか」「引越しは間に合うのか」「手元にいくら残るのか」を考え始めると、条件交渉や引渡し日の判断が難しくなります。反対に、売却前から相場と手残りの目安が見えていれば、買主から申込みが入ったときも落ち着いて判断しやすくなります。
HowMaでは、AI査定で相場感を確認し、必要に応じて不動産会社の査定や相談へ進むことができます。売買契約後に慌てないためにも、売却を本格的に進める前に、価格とスケジュールの目安をつかんでおきましょう。
まとめ
売買契約は、買主が決まり、価格交渉を終え、売却完了に向けた約束を固めるタイミングです。
契約当日の準備物を確認することも大切ですが、それ以上に押さえておきたいのは次の3点です。
- 契約内容を理解する
- 引渡しまでの流れを把握する
- 手残り金額を確認する
売買契約を結んでも、決済・引渡しが終わるまでは売却は完了していません。必要書類、引越し、住宅ローン完済、残置物整理、買主への引継ぎを一つずつ進めていきましょう。
契約日から逆算して準備を進めておけば、決済・引渡しの直前になって慌てる場面を減らせます。売買契約をひとつの区切りとして、ここからは「確実に引き渡すための準備」に切り替えていきましょう。