「自宅を売りに出したものの、なかなか買い手が現れない」、「反響や内覧希望はあるけど、契約までたどり着かない」、「不動産会社から値下げのアドバイスを受けているけど、どれくらい値下げしたらいいか分からない」。
自宅の売却活動をしていて、このような悩みがある方は多いのではないでしょうか。
売れない期間が長引くと、売却依頼を受けている不動産会社は売出し価格の変更(値下げ)を要求してきます。
なぜなら不動産の売却は、物件価格が全てと言っても過言ではないからです。
しかし、ただ何も考えずに不動産会社に言われるがまま売出し価格を値下げするのはおすすめできません。売主であるあなた自身も自宅がなぜ売れないのか、いつ価格変更するのか、どれくらい値下げするのかを考え、判断する必要があります。
今回は、家がなかなか売れない場合の対処法を解説していきます。
売出し価格変更のタイミングやポイントを知って、売却活動を成功させるために今から挽回していきましょう!
まずは家が売れない原因を徹底的に調べる
売却活動がうまくいかず家がなかなか売れないとき、まずは原因を突き止めて分析することから始まります。
家が売れない理由には様々な要因がありますが、突き詰めるとほとんどが次の3つのどれかに該当します。
家が売れない理由1.価格を相場価格より高く設定しすぎている
現在の売出し価格が市場の相場価格より高すぎると、買い手は物件の割高感を意識して敬遠してしまいます。
競合物件とは、あなたが売却する物件と条件が似ており、買い手が物件を購入する際にあなたの物件と比較する物件のことをいいます。
条件が近いとは、物件のタイプ(戸建て、マンション)、立地エリア、間取り、面積、住宅設備、グレードなどが似ているという意味です。
不動産の買い手とは、物件に求める理想は高いですが、価格に対してはかなりシビアに見ています。
売主がなるべく高く売りたいと思うように買主もなるべく安く買いたいと考えています。
あなたの物件が競合物件より何か秀でているものがあれば別ですが、ただ単に相場価格より高い価格で売り出すのは、売却活動を長期化してしまう原因となってしまいます。
特に一括査定サイトなどの査定価格をそのまま鵜呑みにして、査定価格を売出し価格にしている場合は注意が必要です。
自分自身で相場価格を調べる方法は簡単です。
詳細を知りたい方は「誰にも知られず自宅の相場価格を調べる究極の方法【土地・戸建・マンション別】【2024年最新版】」を参考にしてみてください。
家が売れない理由2.物件の魅力がない
「相場に準じた適正な価格で売り出しているのに売れない」「反響や内覧希望はあるけど、契約までたどり着かない」。
このようなケースでは、物件自体に何かしらの問題がある可能性があります。
特に物件の内覧は複数回あるのに契約までには至らないというのは、内覧者が不動産ポータルサイトやチラシで見た物件の内容と実際に物件を見て感じたことにギャップがあることを意味しています。
物件の内覧をすると、立地エリア、家の劣化状態、周辺の環境(特に音や匂い)、人通り、夜間の環境など、実際に現地に足を運んでみて分かるものがたくさんあります。
特に内覧する人が最初に印象付けられるものは物件の見た目です。内覧時には家の中を掃除、整理整頓するのは必須です。
また、キッチンや浴室、トイレなどの水回りの汚れは目立ちやすいので、意識して綺麗にしておくことが大切です。
また、見た目や室内の状態だけでなく、
- 土砂災害警戒区域(イエローゾーン・レッドゾーン)
- 洪水・内水氾濫などのハザードマップ
- 昔は田んぼだった土地を宅地に転用した履歴(地歴)
- 工業地域での土壌汚染や、埋蔵文化財包蔵地 など
「場所そのもの」に由来する不安要素が、買主の判断を鈍らせているケースもあります。
最近は国土交通省の「重ねるハザードマップ」や、自治体のハザードマップである程度は自分でも確認できますし、土地の登記簿から、昔は田んぼだったのか・畑だったのかが分かることもあります。
地盤やハザードリスクと価格の関係が気になる方は、次の記事もあわせてご覧ください。
家が売れない理由3.不動産会社の活動に不足がある
理由1と理由2に該当していないのに、物件がなかなか売れない。
そのようなときは、売却依頼している不動産会社の変更をおすすめします。
売主からすると考えたくないと思いますが、依頼をしている不動産会社に問題がある可能性があります。
不動産会社に問題があるとは、具体的に「売却活動が不十分」または「物件の囲い込みをしている」などが挙げられます。
不動産会社は売却活動として、不動産ポータルサイトなどのネット広告、不動産流通機構(レインズ)への登録、ポスティングや新聞折り込みチラシなどを行います。
これらのなかで不動産流通機構(レインズ)への登録以外は全て費用が掛かります。
大手などの資力がある不動産会社は別ですが、資力が乏しい小規模の不動産会社では、販売活動費用を出したくないがためにレインズ一本で売却活動をしているところもあるのです。
いくら売れる物件でも買い手に物件の存在を知ってもらわなければ売れることはありません。
また、不動産会社が「物件の囲い込み」をしている場合も売れにくくなります。
囲い込みとは、売却依頼をした不動産会社が意図的に物件の情報公開を制限する、顧客である売主の利益に背く悪しき行為です。
なぜ不動産会社がわざわざ囲い込みをするかというと、仲介手数料を多く受け取れる「両手取引」を狙っているからです。
以上のように販売活動を十分に行っていない不動産会社、物件の囲い込みをしている不動産会社は早めに切り替え、しっかりと売却活動をしてくれる不動産会社をみつけましょう。
良い不動産会社の選びかたは「自宅の売却を依頼する不動産会社選びの3つのステップ」を参考にしてみてください。
「反響・内覧・申込」のどこで止まっているかを整理する
家が売れないといっても、
- そもそも「反響(問い合わせ)」や「内覧の案内」が入っていないのか
- 案内は一定数あるのに、「申込」や「契約」に至っていないのか
によって、原因も対策も大きく変わります。
不動産会社から、次のようなことを数字で説明してもらいましょう。
- ポータルサイトや広告の閲覧数・問い合わせ件数
- 実際に入った内覧の件数と、そのペース(1ヶ月あたり何件か)
- 近隣・同じマンション内の競合物件の件数や価格帯
- その競合物件に「案内」「申込」がどのくらい入っているか
案内は入っているのに売れない場合は、
- 写真や図面で期待していた印象と、現地のギャップ
- 室内の印象(生活感・ニオイ・片付け)
- 日当たり・眺望・音・匂いなど、現地で初めて分かるマイナス要因
が決め手になっていない可能性が高いです。
一方で、そもそも「案内が入っていない」場合は、
- 価格設定が相場から外れ過ぎている
- 競合物件の方が、条件の割に割安に見えてしまっている
- 不動産会社の広告や提案に問題がある
といった要因を疑う必要があります。
実際、HowMaに相談をいただいたケースでも、
- 最初は「同じマンションの1つ上の階・間取りが良い部屋」が“目の上のタンコブ”として売り出されていて、
- その部屋が売れて「これで自分の部屋にもチャンスが来た」と思ったら、
- さらに条件の良い競合が新たに出てきてしまい、案内数も申込も伸びなかった
という事例がありました。
「待っていればそのうち売れるだろう」と考えがちですが、実際のマーケットでは、常に新しい競合物件が出てきます。
特にダブルローンの負担が重い方や、「買い替えで早く売り切りたい」方は、「待つ」のか「値下げする」のか「買取も視野に入れる」のか、この段階で一度、戦略を整理しておくことが大切です。
買い手は最終的に物件価格で買うかどうか判断する
ここまで家が売れない理由として、3つの問題点を挙げました。
理由③は別として、理由①と理由②が売れない原因だった場合、売出し価格を値下げすることが、即効性があり一番効果的です。
売出し価格が相場価格より高ければ、適正な価格に値下げをする必要があります。
また、物件自体に問題がある場合でも、その問題を解決するのではなく、単純に物件価格を値下げした方が買い手の購入意欲に刺さります。
例えば、売却物件の劣化状態が悪く買い手が付かない場合、下手に売主がリフォームや修繕を行うのではなく、リフォームや修繕に掛かる費用相当額を売出し価格から差し引いた方が買い手には喜ばれます。
ただし、何も戦略を考えずに物件価格を値下げすれば良いというものではありません。
値下げをするタイミングと値下げする金額について、しっかりと計画を立てて戦略的に行う必要があります。
チャレンジ価格なら「2〜4週間で一度」「3か月で本格見直し」
売出し価格の変更タイミングとして、よく目安になるのが「3か月」と「2〜4週間」です。
まず、売却を急ぐ事情がなければ、
- 売り出してから最初の2〜4週間:
いわゆる「チャレンジ価格」で様子を見る期間 - そこから3か月経過時点(=媒介契約の更新時):
実際の反響・案内・申込の状況を踏まえて、本格的に見直すタイミング
と考えるのが現実的です。
チャレンジ価格でスタートした場合は、
2〜4週間の時点で
- 反響・内覧が「それなりにある」のか
- そもそも「案内がほとんど入っていない」のか
を不動産会社に数字で説明してもらいましょう。
- 案内は入っているが申込が入らない → 室内の印象や競合との比較を見直す
- 案内がほとんどない → 価格や広告の見せ方を早めに見直す
という判断がしやすくなります。
そのうえで、売り出しから3か月経っても成約に至らない場合は、媒介契約の更新のタイミングで、
- 価格を思い切って見直すのか
- 次の繁忙期(たとえば1〜2月)まで戦略的に「待つ」のか
- 買取という選択肢も含めて方針を変えるのか
を、不動産会社と具体的に相談するのがおすすめです。
価格変更はインパクトが命!
続いては、値下げする金額についてです。家が売れるためには一体どれくらいの値下げをする必要があるのでしょうか?
不動産には定価というものが無いため、具体的に○○万円値下げすれば売れると一概には言えませんが、全ての不動産に共通して言えるのは、小刻みにちまちまと値下げしてもあまり効果が無いという事です。
例えば、自宅マンションを4,980万円で売りに出していると仮定しましょう。
売却活動を始めたものの、物件への反響が乏しく売れないまま3ヶ月が過ぎ、媒介契約の更新を迎えました。
ここで価格変更の見直しを行い、80万円値下げして4,900万円で再び売りに出しました。
売主にとっては、80万円も値下げするのはツライ決断だったと思いますが、残念ながら3ヶ月売れなかったマンションが80万円値下げしたところで結果は変わらず、売れないまま時が過ぎていく可能性が高いです。
価格変更(値下げ)は、一発勝負かつインパクトが大事です。
先ほどの例では、4,980万円から4,700万円~4,500万円くらいまでの値下げを考えたほうが良いでしょう。
大きく値下げを行うことで、購入検討者に「ここまで安くなってしまったら他の人に買われてしまう」と思わせ、購入への焦燥感を煽ることができるからです。
一方で、数十万円程度の値下げを数回に分けて行うような方法だと、買い手からは「定期的に値下げされているから待っていれば今後ももっと下がるだろう」、「何回も値下げしているのに売れないってことは何か危険な物件なのか」といった購入するのにネガティブな発想を持たせてしまいます。
価格変更はインパクトが命。はじめに売り出してから3ヶ月経ったのに未だ売れていないときは、思い切った値下げが必要です。
買う側の立場からすると、
- 「この物件は、少し待てばまた値下げされるかもしれない」
- 「何度も値下げしているけど決まらないということは、何か裏があるのでは?」
と考えやすく、“今買うと損をする・ババを引いたような気持ち”になりがちです。だからこそ、
- 小刻みな値下げを何度も続ける
よりも - タイミングを決めて「一度でインパクトのある値下げ」をする
方が、結果として早期売却につながりやすくなります。
値下げしても売れない場合は「買取り」という方法もある
「値下げをしても売れない」「これ以上値下げするのは厳しい」「事情があり早く売却して不動産を現金化したい」という状況では、不動産会社による買取りを利用するのも一つの手です。
また、特に買い替えでダブルローンになっている方や、早めに現金化したい事情がある方は、「大幅な値下げに踏み切る前に、一度買取価格も聞いておく」ことをおすすめします。
買取りは、不動産の買取りを行っている不動産会社自身が買主となり、売主と直接売買契約を締結することになるため、売主と買主のマッチングを行う仲介取引とは全く違った売却方法となります。
一般的な不動産の売却とは仲介取引のことを指しますので、買取りはイレギュラーな売却方法と言っていいかもしれません。
買取りでの売却価格は仲介取引と比べて低くなってしまいますが、買取りならではのメリットもあります。
<買取りのメリット>
① 売却活動が不要なので現金化までのスピードが早い
② 仲介手数料を支払う必要がない(仲介取引では支払う必要があります)
③ 瑕疵担保責任が免責となる(仲介取引では免責にはなりません)
④ 住宅ローン特約がない(仲介取引では住宅ローン特約がつきます)
<買取りのデメリット>
① 仲介取引と比べて売却価格(=買取り価格)が低くなる
全ての不動産が買取りの対象となるわけではありませんが、首都圏エリアの不動産であれば、積極的に買取りをしている不動産会社が数多くありますので、興味がある方は不動産会社に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
その前に「不動産の仲介取引と不動産の買取りの違い」を読んで予習しておきましょう。
買取業者の立場から見ると、
- 「売り出したばかりの新鮮な物件」
よりも - 「3か月以上、値下げを繰り返しても売れなかった物件」
の方が、どうしても評価は厳しくなります。チャレンジ価格で売り出したものの、
- ダブルローンの負担が重い
- 住み替え先の引き渡しが決まっている
といった事情がある場合は、
- チャレンジ価格の8割程度で買取してもらえないか
- その金額と、仲介で値下げしながら売り切るプランを比較してどうか
という視点で一度シミュレーションしてみると、「どこまで待つか/どこで腹をくくるか」の判断がしやすくなります。
まとめ
最後におさらいとして、今回の内容をまとめましたので、もう一度チェックしてみてください。
<家が売れない、売却活動に行き詰った時>
まずは家が売れない原因を調べる。家が売れないほとんどの原因は次の3つに絞られる。
① 売出し価格が相場価格より高い
→値下げで対処。
② 売却物件に何かしらの問題がある
→値下げで対処。
③ 売却依頼している不動産会社に問題がある
→値下げの前に不動産会社を変える。不動産会社の選び方は「家の売却を依頼する不動産会社選びのポイント」を参考に。
<値下げするときのポイント>
① 値下げのタイミングは媒介契約の更新時(=売り出してから3ヶ月後)がベスト。
② 値下げはインパクトが命!こまめに少額を値下げするのではなく、一回で一気に値下げする。
<値下げしても売れないとき>
当初の仲介取引による売却から不動産会社による買取りへ変更するのも一つの手。
買取りは仲介取引より売却価格が低くなるが、買取りならではのメリットもあるので検討の価値あり。