「仲介手数料無料」「手数料0円」最近こうした広告をよく見かけませんか?
一見「そんなに安くして本当に大丈夫?」と思ってしまいますが、無料になるのには明確な仕組みがあります。
結論から言うと、「売主側を無料にする代わりに買主から仲介手数料を得る」「買主側を無料にする代わりに売主から仲介手数料を得る」というように、誰か一方の手数料で収益を確保しているから成立しているのです。
ただし、手数料無料だからといって、最終的に「売却価格を最大化できる」とは限りません。提案サービスが減ったり、売却価格・条件の交渉に差が出たり、買主集客への力の入れ具合が変わるなど、実は大きく違いが出ます。
そこで本記事では、仲介手数料が無料になる仕組み、不動産会社側の5つのメリット、売主が注意すべき2つのポイントを分かりやすく解説します。
なぜ仲介手数料を無料にできるのか?
仲介手数料無料の話の前に、まず「仲介取引」について簡単にご説明します。我々が接する一般的な不動産の売買や賃貸は「仲介取引」です。仲介とは「売主と買主の間に入り、契約を成立させる仕事」で、不動産会社へ支払う報酬が、仲介手数料です。(詳しくは「不動産の仲介取引と不動産の買取りの違い」をご覧ください。)
そして不動産会社は仲介手数料無料でも、きちんと利益を確保しています。ではどうやって儲けているのか?答えは、「どちらかから取る」というものです。
どういうことかというと、買主や借主に対しては仲介手数料を無料にしている場合は、売主、貸主から利益を取ります。逆に売主、貸主の仲介手数料を無料にしている場合は、買主や借主から利益を取っているのです。
賃貸と売買では少し事情が異なるので分けて説明します。
売主側の仲介手数料が無料の場合:買主から手数料をもらって利益を得る
売主側の仲介手数料無料をうたっている仲介会社は多く存在します。
売主から売却の依頼を受け自社で買主を見つけて、買主から手数料をもらうという方法です。
売主 (仲介手数料0円) → 仲介会社 ← 買主(仲介手数料3%)
中には、買主を自社で見つけられた場合は仲介手数料無料、他社の紹介で買主がみつかった場合は仲介手数料半額(広告では「仲介手数料最大無料」などとアピールしています)という会社もあります。
売却の依頼を獲得することは難しいので、手数料割引で売主からの売却依頼を獲得しようという手法です。
買主側の仲介手数料が無料の場合:売主から手数料をもらって利益を得る
実は売主が個人の売買仲介の場合、買主の仲介手数料無料というケースはほとんどありません。比較的、仲介手数料無料となりうるのは売主が不動産業者のケースです。
売主 (仲介手数料3%) → 仲介会社 ← 買主(仲介手数料0円)
新築建売りは、まさにそうで、仲介手数料無料を打ち出してる場合が多いです。なぜかというと、不動産業者が売主の場合、成約すると仲介手数料とは別の名目で仲介会社にインセンティブが支払われるからです。
宅建業法では、仲介手数料は売却価格×3%+6万円が上限と定められていますが、実態は業務委託料、広告料などといった名目で実質仲介手数料と同額分を上乗せして支払うことがあるのです。つまり、仲介手数料を買主から取らなくても、仲介会社はその分を売主から貰っているのです。
〈賃貸仲介の場合〉借主側の仲介手数料が無料の場合:貸主から手数料をもらって利益を得る
賃貸の場合も考え方は基本的に売買と同じで、借主から仲介手数料を取らない分、貸主から広告費などの名目でしっかりと利益を得ています。
売買との大きな違いは貸主が不動産業者でなくても広告費や業務委託料が仲介会社に支払われるということです。
賃貸の仲介手数料は家賃の1ヶ月分までと決められているので、広告費(入居者募集のためのSUUMOなど掲載料)や業務委託料といった名目になります。インターネットや不動産会社の店頭で入居募集している物件数の内、約50%の物件では広告費がオーナー(貸主)から仲介会社に支払われています。
総じて、賃貸仲介も売買仲介も競争が激しい業界です。少しでも多くの集客を得るために仲介手数料無料を打ち出したりしていますが、先ほど紹介したようにガッチリと利益は取れているのです。
残念ながら、一部の不動産会社はお客様の希望条件より、仲介手数料などのインセンティブが発生する物件を優先的に紹介したり、1人の担当者が同時に担当する案件数を増やしたりします。
不動産を売却したい場合、次のようなリスクがあります。
- チャレンジ価格より、すぐ売れる価格を提案される
- 買主からの価格交渉が入った時は買主(手数料を支払う顧客)を優先される
- 自社で買主を見つけたいために囲い込みされ、売却期間が長期化する
- 1人の担当者が同時に担当する案件数が増えて、対応スピードや提案・報告の質が低下する
囲い込みについては、「改正宅建業法で変わる囲い込み防止策とは?」を併せてご覧ください。
つまり売主にとっては買主に紹介されなかったり後回しにされるので、「1円でも高く売る、より良い条件で早く売る」という目的を達成できません。
買主も同様に、「少しでも安く、良い条件で購入する」という目的達成に最大限コミットしてもらうのは難しいということです。
大手・中小などの規模に関係なく、不動産会社の紹介できる物件数は基本的に全て同じですので、最終的には担当者の対応スピードや提案力を見極めた方が、長い目で見れば得をします。
「仲介手数料無料」は不動産会社にとってメリットがあるのか?
1. 取引量を増やせる
仲介手数料を無料または割安(例えば3%を1.5%に割引)にすることで、「売ろうか迷っている」状態の不動産所有者は費用負担が軽くなるので売却判断ハードルが下がり、より多くの顧客を獲得できます。
例えば、10件の物件を通常の手数料で扱うよりも、30件の仲介を安い手数料で取り扱うことで、結果的に総収入を増やせる可能性があります。
2. 広告効果とブランディング
「仲介手数料無料」という分かりやすいメッセージには、強力な広告効果があります。新規参入の不動産会社が短期間で認知度を高める戦略として効果的です。
3. リピーターを獲得できる
前述した通り、不動産会社によって売却価格やサービスが大きく変わることはありません。例えば4,000万の家を売却する時、通常は仲介手数料の上限(3%+6万円)126万円がかかります。
しかし「仲介手数料が1.5%になれば60万円になる」というように、売主にとっては大幅な費用削減ができます。
住み替えをしたい人から、自宅売却と新居購入の仲介を同時にお願いされたり、ライフステージが変わった時に再び仲介をしてほしいと依頼が来るようになります。リピーターが増えれば、新規顧客を集めるための広告費用を抑えることができる好循環が生まれます。
4. 物件情報の蓄積
多くの売却物件を取り扱うことで、市場動向や価格情報などの貴重なデータが蓄積され、ビジネスの質を高めることができます。
5. 関連サービスの販売機会
住宅ローンを提供する銀行、引っ越し業者、リフォーム工事会社といった不動産売買に関連するサービス提供企業からの紹介料を得る機会が増えます。
不動産オーナーにとって「手数料無料」のデメリットは無いのか?
1. サービスの質の懸念
手数料無料の会社は、多くの物件を扱うことで利益を上げる「量」重視のビジネスモデルを採用する場合が多く、それぞれの物件に対する時間や注力が少なくなる可能性があります。
例えば、不動産会社の1人の営業マンが1ヶ月に平均5件の物件を担当して、不動産オーナーからの疑問や問い合わせに対していつでもすぐに回答・改善案をするのに対し、手数料無料の会社は1ヶ月に平均20件を同時に扱うため、1件あたりの対応時間が少なくなる。
2. 売却価格への影響
仲介手数料を取る不動産会社は、高く売れるほど自分の取り分も増えるため、価格交渉に力を入れる動機があります。一方、固定料金の場合はその動機が弱まる可能性があります。
例:4,000万円で売れそうな家でも、通常の不動産会社なら4,200万円での売却を目指して次のような様々な販売戦略の提案をしてくれるかもしれません。
- 適切な売り出し価格の値付け
- ポータルサイトのオススメ枠に期間限定で掲載する
- 買主の集客のためのチラシ配布
- 設備保証サービスの提供
- 居住中でもCGを使ってリフォームイメージや空室イメージ写真を作成する(VRステージング)
- 引き渡し前のハウスクリーニングサービスの提供
- 段階的な値下げ金額や値下げ時期の提案(売却戦略)
しかし手数料無料の会社では、そこまで粘り強く提案をしてくれなかったり、買主と積極的な交渉をしない可能性があります。
不動産会社選びでは、仲介手数料以外にも様々な視点で検討するべき
仲介手数料が無料になる裏側には、必ず「別の収益源」があります。そのため、手数料の安さだけで選んでしまうと、サービス品質のばらつきや売却価格への影響など、別の部分で損をしてしまう可能性があります。
大切なのは、
- その会社がどこから利益を得ているのか
- 売主・買主どちらに強い会社なのか
- 提案内容や集客力は十分か
を総合的に判断することです。
手数料は不動産取引の一部にすぎません。仕組みを理解して選べば、コストを抑えつつ、より良い条件で不動産売却・購入を進めることができます。
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