「土地が3,000万円で売れるなら、3,000万円が手元に残る」とは限りません。
売買代金がすべて手元に残るわけではなく、仲介手数料や印紙税がかかり、土地の状態によっては測量・境界確認や解体の費用も必要です。さらに、売却で利益(譲渡所得)が出れば、所得税と住民税の対象になります。
もちろん、売却には土地をまとまった現金に一度で換えられる利点もあります。大切なのは、売却価格ではなく実際の手取り額を把握し、そのうえで土地を残して活用する場合の収支と比べることです。
本記事では、売却時にかかる主な費用と税金、手取り額の目安の出し方を確認したうえで、土地を残して活用する場合と比べるポイントを見ていきます。
売る前にチェック
売却の手取りと、活用した場合の収支を比べてみませんか?
土地を売る前に、手元に残る金額と、所有を続ける場合の可能性を整理しましょう。土地の条件によって実現できる活用は異なります。
(新しいタブで開きます)活用可能性・費用・収益は土地条件と事業者の調査により異なります。
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土地売却の手取りを減らす主な費用
売却価格の全額が、そのまま使える資金になるわけではありません。
売却に伴う支出には仲介手数料や印紙税があり、条件によっては測量・境界確認費用、解体費、登記関連費用も必要になります。さらに譲渡益が生じれば税負担の検討が必要です。
売却を決める前に、想定価格だけで判断せず、費用と税金を含めた概算手取り表を作成しましょう。その手取り額を、保有を続ける場合の維持費や管理負担、活用する場合の収支と比べる基準にします。
まずは各費用が必要になる条件と負担者を確認し、続いて譲渡所得への課税を見ていきます。
仲介手数料・印紙税・測量費などの諸費用
仲介手数料は、不動産会社の仲介で売買契約が成立した場合に発生します。想定売却価格と仲介手数料の見積額は、不動産会社に確認します。
売買契約書にかかる印紙税は、契約書に記載された金額によって税額が変わります。契約書の作成方法も確認し、売主が負担する額を確かめます。
測量・境界確認や古家の解体が必要といわれた場合は、その理由と負担者を確かめ、該当する事業者から見積もりを取ります。登記関連の手続きが必要な場合も、内容と費用、負担者を個別に確認します。すべての費用がすべての売却に必要になるわけではありません。
見積もりでは「売却代金から支払う額」と「売却前に用意する額」を分けると、売却までに必要な現金も把握できます。税額計算で差し引ける費用かどうかは、領収書や契約内容をもとに別途確認します。
必要な費用は、土地の状態と契約の条件で変わる
| 費用 | かかる場面 | 見積もり・確認先 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 不動産会社に仲介を頼み、 売買が成立したとき |
不動産会社 仲介手数料の見積額を確認 |
| 印紙税 | 売買契約書を作るとき 契約金額などで額が変わる |
契約金額をもとに確認 |
| 測量・境界確認 | 必要といわれたとき 理由と、誰が負担するかを確かめる |
土地家屋調査士など |
| 古家の解体 | 建物を解体して売るとき 理由と、誰が負担するかを確かめる |
解体業者 |
| 登記関連 | 登記の手続きが必要なとき | 司法書士など 内容と費用を個別に確認 |
見積もりは「売却代金から支払う額」と「売却前に用意する額」に分けて書き出すすべての費用が、すべての売却で必要になるわけではありません。
出典:国土交通省「不動産取引に関するお知らせ(仲介手数料)」、国税庁「不動産の譲渡・土地の賃貸借・消費貸借・運送等に関する契約書」。
譲渡所得への課税
売却時に支払う費用と、譲渡所得の計算上差し引ける「譲渡費用」は同じとは限りません。取得費を示す購入時の資料と、売却に直接かかった費用の契約書・領収書は、分けて保存します。
課税譲渡所得は原則として「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で計算します。税率が掛かるのは売却価格全体ではなく、この課税譲渡所得です。
購入時の資料で取得費を確認できるかどうかで、税額の見積もりも変わります。相続した土地では、原則として被相続人の取得費と取得時期を引き継ぎます。被相続人が土地を購入したときの古い売買契約書や領収書も探しておきましょう。
購入時の契約書などがなく取得費が分からない場合は、売却額の5%相当額を概算取得費として使えます。概算取得費は税額の計算に使う金額であり、売却時に新たに支払う費用ではありません。保有中の固定資産税や維持管理費も譲渡費用には含めません。
出典:国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」、国税庁「譲渡費用となるもの」、国税庁「取得費が分からないとき」、国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」。
所有期間で変わる税率と特別控除を理解する
譲渡所得にかかる税率は、土地の所有期間によって変わります。
ただし、税制上の特例や取得費の計算は状況によって変わります。記事中の式は目安であり、実際の税額には、個別の条件を踏まえた税理士などへの確認が必要です。
では、長期と短期の違いと、特別控除が使える場合について見ていきましょう。
長期と短期の違い
原則、売却した年の1月1日時点の所有期間が5年超なら長期、5年以下なら短期です。所得税・住民税の税率は長期が15%・5%、短期が30%・9%で、復興特別所得税等の扱いにも注意が必要です。相続では、原則として被相続人の取得時期を引き継ぐため、単純に相続日から数えません。
5年を超えるかどうかで、税率は約2倍変わる
所得税15%
住民税5%
合計復興特別所得税を含む20.315%
所得税30%
住民税9%
合計復興特別所得税を含む39.63%
- 所有期間は、売却した年の1月1日時点で判定する
- 相続した土地は、原則として亡くなった人の取得時期を引き継ぐ
- 税率は、売却価格ではなく課税譲渡所得に掛かる
出典:国税庁「土地や建物を売ったとき」、国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」。
特別控除が使える場合がある
相続空き家の特例では、一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。2024年1月1日以後の譲渡で、対象となる家屋と敷地等を取得した相続人が3人以上の場合は最高2,000万円です。ただし、相続した土地なら一律に使える制度ではありません。家屋の建築時期や利用状況、売却時期などの要件を個別に確認してから、手取りに反映しましょう。
出典:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」。
【試算例】売却と活用、何を比べればよい?
ここでは、具体的な金額を使って、売却後の概算手取りと土地活用の年間収支を見てみましょう。
例えば、売却価格3,000万円、取得費1,850万円、売却時に支払う費用150万円(この例では全額が譲渡費用)、長期譲渡で特別控除なしの場合、税額は203万1,500円、概算手取りは2,646万8,500円です。
これに対して、土地活用で年間売上180万円、維持費等60万円なら、年間の事業収支は120万円になります。
ただし、この120万円には初期投資、借入返済、所得税・住民税、更新工事、空室や賃料下落を織り込んでいないため、毎年120万円が手元に残るとは限りません。
売却と活用は、同じ時点・同じ期間で、残る現金と土地を比べます。将来の収入は不確実で、売却後の手取りを別の運用に回す可能性もあるため、単純に年間収入を何年分足せば売却代金に届くかだけで判定しないようにしましょう。
家族が土地を使いたい時期や期間と、売却前・活用開始時に必要な資金を用意できるかも比較条件に入れましょう。活用する場合は、希望する時期に土地を使える契約かも確認します。
同じ時点・同じ期間で、残る現金と土地を比べる
| 比べる項目 | 売却 | 活用 |
|---|---|---|
| 今受け取る現金 | 売却時の費用と税額を引いた 概算手取り |
売却代金は入らない |
| 活用開始時に 必要な資金 |
売却前に用意する費用 (測量・解体など) |
初期投資、借入額、 開始時に必要な自己資金 |
| 5年・10年で 手元に残る現金 |
売却後の手取りの使い道と 残る現金 |
収入から、空室による減収・管理費・修繕費・税金・借入返済を反映した累計現金 |
| 土地の価値と 残る負担 |
土地は残らず、 維持管理から離れられる |
土地・建物の価値が残る一方、管理や契約上の制約が続く。契約終了後に使う・売る自由も確かめる |
年間収入を何年分か足して、売却代金と比べるだけでは判断しない将来の収入は不確実で、売却後の手取りを別の運用に回すこともできるためです。
土地を残す場合の活用方法と収入・費用の比べ方は、土地活用ガイドの収支比較で確認できます。 費用に加えて管理や契約の自由度も比較したい方は、『売却と活用を比べる7つのポイント』(リンクなしクラスター5へリンク予定)をご覧ください。
では、先ほどの例をもとに、売却の手取りの考え方を見ていきましょう。
売却の手取りの考え方
概算手取りは「売却価格-売却時に支払う費用-売却による税額」で求めます。税額のもとになる課税譲渡所得は、これとは別に計算します。取得費・譲渡費用・特別控除を確かめ、売却価格そのものに税率を掛けないようにします。
上の比較例では、取得費1,850万円と売却時に支払う費用150万円を仮定します。この例では、その150万円の全額が譲渡費用に当たるものとして計算します。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える長期譲渡とし、特別控除は使わず、ほかに売却時の支出はないものとします。
課税長期譲渡所得は「3,000万円-(1,850万円+150万円)=1,000万円」です。所得税150万円と住民税50万円に、復興特別所得税3万1,500円(所得税の2.1%)を加えると、税額は203万1,500円です。
概算手取りは「3,000万円-150万円-203万1,500円=2,646万8,500円」となります。取得費は税額の計算に使う金額ですが、売却時に新たに支払う費用ではないため、手取りの計算では差し引きません。
税額は課税所得から、手取りは売却価格から計算する
課税長期譲渡所得
売却価格3,000万円
-取得費1,850万円
-譲渡費用150万円
=課税所得1,000万円
税額(長期譲渡)
所得税 15%150万円
住民税 5%50万円
復興特別所得税
(所得税の2.1%)3万1,500円
=税額203万1,500円
概算手取り
売却価格3,000万円
-売却時に支払う費用150万円
-税額203万1,500円
- 取得費は税額の計算に使う金額だが、売却時に新たに支払う費用ではないため、手取りからは引かない
- 税率は売却価格そのものではなく、課税所得に掛ける
前提:所有期間5年超の長期譲渡、特別控除なし。売却時に支払う費用150万円の全額を譲渡費用と仮定し、ほかに売却時の支出はないものとします。数値は計算の順序を示すための仮定です。
図の2,646万8,500円は、借入金の返済を含めない概算です。実際の税額は、取得費や譲渡費用、適用できる特例によって変わります。売却時に支払う費用を見積もり、借入金がある場合は返済額も確かめて、売却後に使えるお金を把握しましょう。長期譲渡所得の税額の計算方法は、国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」で確認できます。
土地活用は「家賃=利益」ではない
比較に使うのは募集賃料や売上ではなく、初期投資と毎年の費用を織り込んだ収支です。借入がある場合は返済額、貸す場合は空室や修繕を見込んだ条件も併記します。
貸す案では、想定した賃料で借り手が見込めるかを確かめます。近隣事例を参考にするときは、立地・敷地面積・設備・契約条件が自分の土地と近いかを確かめます。提案された金額は、その前提と見積もりを残しておきましょう。
土地活用が売却より必ず得とはいえません。売却後の資金運用や将来売却できる自由度も比較に含めてください。
売る前にチェック
売却の手取りと、活用した場合の収支を比べてみませんか?
土地を売る前に、手元に残る金額と、所有を続ける場合の可能性を整理しましょう。土地の条件によって実現できる活用は異なります。
(新しいタブで開きます)活用可能性・費用・収益は土地条件と事業者の調査により異なります。
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売る前に相談しておきたい2つの窓口
最初に売却価格と概算手取りを確認することで、売却を選んだ場合の基準線ができます。
そのうえで活用の専門家に土地の情報を伝え、何が実現可能か、どのくらいの投資が必要か、管理は誰が担うかを相談します。相談の目的は「必ず活用する」と決めることではありません。売却の判断に必要な材料を増やすことです。
では、税理士などと活用事業者、それぞれの窓口で確認したいことを見ていきましょう。
税理士などに手取り額を確認
取得時の契約書、相続関係資料、見込み売価、売却のための費用を整理して、適用できる税制と税額を確認します。
見込み売価がまだない場合は、税理士に相談する前に不動産会社に売却価格と仲介手数料などの見積もりを依頼しておきます。
査定方法の違いは、土地の査定方法と価格の決まり方も参考にしてください。
税理士には、見積もった費用のうち譲渡費用にできるものと、特別控除の適用可否を確認します。その結果を反映した税額と、実際の支出を引いた概算手取りを一つの条件で試算してもらいましょう。
活用事業者に成立可能性を確認
活用の収支だけでなく、初期投資や需要の見込み、途中解約の条件、将来売却するときに契約が及ぼす影響も確認します。売却手取りと活用案の数字がそろって初めて比較できます。
問い合わせ時には、土地の所在地、面積、現況、接道状況、保有目的、初期投資の許容範囲を伝えると話が具体的になります。
「売却も迷っている」「借入は避けたい」と率直に伝えることも大切です。契約前に費用と相談範囲を確認してください。
提案を受けるときは、初期投資の額と支払時期、年間収入の見込みとその根拠、管理・修繕・税負担、借入返済を分けて示してもらいます。5年・10年の収支を比べるなら、空室や収入減が起きた場合の見込みも確認し、土地が手元に残ることと、契約中に使い方を変えられるかを別に見ます。
活用を始めるまでの準備にかかる期間と、収入が入り始める時期を事業者に確認し、まとまった資金が必要な時期と照らし合わせておきましょう。
貸す案では、契約期間、原状回復、修繕の負担、保険への加入の有無と費用負担に加え、家族が使いたい時期に土地を返してもらえるかも確認しましょう。
活用の提案内容が条件に合わなければ、売却を選び直せます。また、管理負担を確かめたうえで、活用を見送り保有を続ける選択もあります。
よくある質問
売却するか、土地を残して活用するかを考えるときは、税金のかかり方も気になるところです。ここでは、売却益への課税と、土地を持ち続ける場合の税負担について、よくある質問にお答えします。
土地を売れば必ず譲渡所得税がかかる?
いいえ。売却代金の全額に税率を掛けるのではなく、取得費・譲渡費用などを差し引いた譲渡所得をもとに計算します。利益が出ない場合や、使える特別控除を差し引くと課税譲渡所得がなくなる場合は、譲渡所得に対する税額は生じません。取得時の資料と売却費用の見積もりをそろえ、特例の適用を含めて確認しましょう。
土地を売らずに活用すれば、税金はかからない?
いいえ。土地を売らずに活用する間は、通常、売却による譲渡所得への課税は生じません。ただし、土地を貸した場合は、賃料収入から必要経費を差し引いた所得に所得税・住民税がかかることがあり、固定資産税などの保有負担も続きます。売却時の課税がないだけで得と決めず、税金や管理費などを引いた活用収支と売却後の手取りを比べてください。
出典:国税庁「不動産収入を受け取ったとき」、横浜市「所得」。
まとめ|売却の手取りと活用の収支を比べる
売却価格と見込み賃料だけでは、売るか活用するかを比べられません。判断する前に、次の4点を確認しましょう。
- 売却して今受け取る現金:見込み売価から売却時の費用と税額を引き、概算手取りを出す。取得費・所有期間・特別控除の条件と、資金が必要な時期も確かめる。
- 活用開始時に必要な資金:初期投資、借入額、開始時に用意する自己資金を確認する。
- 5年・10年で手元に残る現金:空室や修繕、税金、借入返済を織り込んで活用の累計現金を見積もり、売却代金の使い道と残る現金とも比べる。
- 土地の価値と残る負担:売却すれば土地は残らず、維持管理から離れられる。活用では土地・建物が残る一方、管理や契約上の制約も続く。残る価値と、契約終了後に使う・売る自由を確かめる。
不動産会社の売却価格・費用の見積もりと、税理士が確認した税額をそろえます。活用案については、事業者に収支の根拠と契約条件を確かめましょう。
条件に合う活用案がなければ、売却や当面の保有も選択肢です。検討できる案があれば、費用と契約条件を確認し、売却後の手取りと比べてから決めましょう。
売る前にチェック
売却の手取りと、活用した場合の収支を比べてみませんか?
土地を売る前に、手元に残る金額と、所有を続ける場合の可能性を整理しましょう。土地の条件によって実現できる活用は異なります。
(新しいタブで開きます)活用可能性・費用・収益は土地条件と事業者の調査により異なります。
HOME4U土地活用運営:株式会社NTTデータ・ウィズ