「自分はいくらまで借りられるんだろう?」
マンション購入を検討し始めたとき、誰もが最初にぶつかる疑問です。
しかし、銀行のシミュレーターで計算しても「本当にこの金額で審査が通るのか?」という不安は消えません。なぜなら、実際の審査では「表示されている金利」ではなく「審査専用の高い金利」で計算されているからです。
第5回目では、住宅ローン手続きの流れや提携ローンの内容について取り上げました。
そこで今回は、住宅ローンの「借りられる額」と「無理なく返せる額」の違いを明確にし、2025年に注目されている40年・50年ローンの選び方、そして見落としがちな諸費用まで解説します。
あなたの住宅ローン限度額とは?
マンションを購入する際、全額を現金で支払うのは現実的ではありません。ほとんどの方は住宅ローンを利用するわけですが、一体いくらまで借入ることができるのでしょうか?
銀行が「貸せる上限」を決める際、実は4つの基準があります。
- 返済比率:年収に占める年間返済額の割合(年収の25〜35%が目安)
- 審査金利:実際の金利ではなく、2%以上の高い金利で計算される
- 年収倍率:年収の約8〜10倍が目安
- 担保掛目:物件価格の何%まで貸すか(80〜100%が目安)
このうち、特に「返済比率」と「審査金利」が重要です。この2つを理解しないと、「シミュレーターでは借りられると出たのに、審査で落ちた」という事態になりかねません
返済比率とは、年収に占める年間返済額の割合のこと
返済比率は、シンプルに言うと「無理なく返せる月返済額の上限」を決める指標です。この年間返済額には、住宅ローンだけでなく、車のローンや教育ローンなども含まれており、それぞれの合算した金額が対象となるので注意が必要です。
返済比率の基準は各金融機関によって多少異なりますが、一般的には、年収の25%~35%程度です。なお、フラット35の返済比率は、年収400万円未満の人は30%以下、年収400万円以上の人は35%以下が申込要件となっています。
例:年収600万円の場合
返済比率30%の場合:年間180万円(月15万円)が上限です。もし車のローンで月3万円返済中なら、住宅ローンは月12万円が上限になってします。そのため、もし他に新規借り入れの予定がある場合は、できるだけ住宅ローンの契約後(購入の決済まで終わった後)に借り入れするようにしましょう。
金融機関ごとの「年収倍率」の目安
一般的に、
- メガバンク:年収の約8倍
- 地方銀行:年収の約10倍
が、借入可能額の一つの目安と言われています。
特に年収800〜1,000万円以上になると、生活費に必要な基礎支出が大きく変わらないことから、地方銀行では借入余力が大きく見られる傾向にあります。
「実行金利(実際に適用される金利)」と「審査金利」の違い
審査で使われる審査金利は、実行金利(例:変動金利0.5%)とは異なります。多くの銀行では3%以上の審査金利を採用しています。
具体例で比較:
- 実際の金利0.5%で計算 → 5,000万円借りられる
- 審査金利3.0%で計算 → 3,500万円しか借りられない
つまり、銀行のローン借入シミュレーターで「5,000万円OK」と出ても、審査では1,500万円減額される可能性があります。そのため、複数の銀行で事前審査を並行して進めることが鉄則です。
担保掛目は、購入するマンションの担保評価額に対する借入金額の割合
返済比率と同様に担保掛目も金融機関によって異なりますが、80%がひとつの目安となります。
最近では、住宅ローンの競争激化の影響もあって、100%まで借入可能な金融機関も増えてきました。なお、フラット35では90%となっています。
このような傾向もあることから、最近の金融機関は、担保掛目よりも返済比率を重要視しているように思います。
実際のローン金利と審査金利は違う
返済比率の計算で注意が必要なのが、先ほど説明した年間返済額の内、住宅ローンの返済額については、「住宅ローン金利」ではなく、「金融機関独自の審査金利」で計算していることです。
この審査金利のほとんどが、住宅ローン金利よりも高く設定されているため、住宅ローン金利で計算した年間返済額で返済比率をクリアしていても、審査金利で計算した年間返済額が返済比率をクリアしていない場合は、審査落ちになる可能性もあります。
このようなことを避けるためにも余裕を持った返済比率になるよう、頭金を多めに準備するなど借入額を調整しましょう。
実際には、「返済比率」「審査金利」「年収倍率」「担保掛目」の4つの指標の他にも、完済時の年齢、借入時の年齢、勤続年数、勤務先など、金融機関によって独自の審査があります。詳細は銀行などの住宅ローン相談窓口に問い合わせてみてください
銀行選びでは「保証料型」か「手数料型」かも重要
- 保証料型:保証会社に預ける仕組みで、一括前払いの場合は繰上返済すると未経過期間分が戻ってくる
- 手数料型:銀行に支払うもので、繰上返済しても戻らない
保証料型を採用している金融機関には、多くの地方銀行などがあります。
なお、保証料について誤解されやすいのが、「銀行の利益」ではなく、保証会社に預ける性質のものだという点です。そのため、保証料型では一括前払いしか選べない金融機関もあります。
こうした費用や条件は金融機関ごとに大きく異なるため、金利だけではなく、審査金利・年収倍率・保証料方式・団信の種類・事務手数料まで含めて比較し、複数の銀行で事前審査を進めておくことをおすすめします。
返済期間は35年だけじゃない。40年・50年の長期ローンを選ぶメリット・デメリットとは
近年の住宅価格高騰に伴い、銀行が借り手の年齢や返済能力に応じて「40年ローン」を案内するケースが増えています。さらに一部では「50年ローン」といった超長期ローンも登場しており、返済期間の考え方は大きく変わりつつあります。
長期ローンを選ぶメリット
1. 月々の支払い負担を抑えられる
例:5,000万円を借りる場合
– 35年ローン(金利0.5%):月12.9万円
– 50年ローン(金利0.7%):月10.2万円
– 差額:月2.7万円。
この差で「子供の教育費」や「老後資金」を並行して準備できる。つまり、ライフステージの変化に対応できる余力を残せます。
2. 借入限度額が上がるので、購入できる選択肢が増える
例えば、35年ローンでは年収の7〜8倍までが借入限度となるケースが多い一方、50年ローンでは10〜12倍の借入額に対応できる例もあります。つまり都心部の住宅など、より条件が良い家を購入ができる可能性が上がります。
3. 「後から短くする」ことは簡単、「後から伸ばす」ことは困難
– 50年で組んでも、繰上返済で30年に短縮することは自由。
– 35年で組んだ後に「やっぱり50年に」はできない(借換えには数十万円の手数料がかかることも)。
長期ローンを選ぶデメリット
– 総返済額は増える(利息負担が約300〜500万円増加)
– 完済時年齢が75〜80歳になるリスク
結論、「手元資金を厚く持ち、繰上返済で調整する前提」なら、長期ローンは有効な選択肢です。
もちろん、返済期間が長くなるほど金利が上がり、総返済額は増えるため、長期ローンが万人に最適というわけではありません。
ただし、20〜30代の自宅購入層では、家賃との比較を行う際に40年ローンでシミュレーションすると「現実的に検討できる価格帯」が見えやすくなるため、1つの選択肢として知っておくと役立ちます。
健康状態に不安がある人向けの団信の選択肢
持病があるから家は買えない」は誤解です。近年では、健康上の事情に配慮した金融機関の選択肢が広がっており、主に次のような選択肢があります。
| 選択肢 | 内容 | 適している人 |
| ワイド団信 | 金利+0.2〜0.3%で加入条件を緩和 | 軽度の持病(高血圧、糖尿病など)がある人 |
| 連帯債務(夫婦・親子) | パートナーが団信に加入 | 配偶者や親が健康な場合 |
| フラット35(団信なし) | 団信加入を任意にし、金利0.2%を引き下げ | 団信に加入できない、または民間保険で代替したい人 |
健康状態に不安がある方は、まずは住宅ローン本審査より先に団信審査を進めたり、上記のような選択肢がある銀行を選ぶことで、ムダな時間を省き、ローン手続きを安心してスムーズに進められます。
どの銀行が、どこの生命保険会社と提携しているか、どの団信条件を提示しているかは大きく異なります。複数の金融機関の条件を比較しましょう。
様々な視点から説明しましたが、住宅ローンは「最安金利の銀行を探す」よりも、「自分に一番合う銀行と条件を見つける」ことが重要です。
意外とかかる?購入時の諸費用
次はマンションを購入する際の諸費用について取り上げたいと思います。
初めてマンションを買う方のよく勘違いされることの1つとして、資金計画に諸費用を考慮していないことがあります。
広告チラシなどには、「毎月の家賃より住宅ローン支払額の方が安くてお得!」のようなセールストークが全面に押し出されているため、無理もありません。実態として、広告チラシなどに親切に諸費用の内容まで記載されているケースは、残念ながらほとんどありません。
いろいろ探し回って理想のマンションに出会ったのに、資金計画が甘かったため断念というケースを防ぐためにもしっかりと諸費用を頭に入れておくことが大事です。
主な諸費用の内訳と目安
諸費用の大まかな目安は、マンション価格の5%程度です。
主な諸費用の内訳は次のとおりです。
〈税金・登記費用〉
- 印紙税
- 登録免許税(司法書士手数料)
- 不動産取得税
- 固定資産税・都市計画税精算額
〈ローン費用・保険料等〉
- ローン事務手数料
- 保証料(保証取扱手数料)
- 団体信用生命保険料
- 火災保険料・地震保険料
〈管理費・修繕関連費用〉
- 管理費準備金
- 修繕積立基金
マンションによって、諸費用の内訳に多少の違いはあるので、詳細は不動産会社に問い合わせてみてください。
例:4,000万円のマンションを購入する場合の諸費用の計算
| 費用項目 | 金額目安(例:4,000万円) |
|---|---|
| 仲介手数料(中古のみ) | 物件価格×3%+6万円=約126万円 |
| 登記費用:登録免許税(所有権移転登記+抵当権設定登記)+司法書士費用 | 約106万円 ・所有権移転登記:物件価格×2%=80万 ・抵当権設定登記(住宅ローン):物件価格×0.4%=16万 ・司法書士報酬:10万円程度 ※一定の要件を満たす場合は、軽減税率が適用されてこれより安く抑えられます。 |
| ローン事務手数料 | 融資額の2.2%=約66万円 |
| 保証料 | 金利+0.2%または、約60万円 |
| 火災保険料(5年分) | 約10万円 |
| 固定資産税精算金 | 約5万円 |
| 合計 | 約373万円 |
諸費用の支払いについては、諸費用ローンと言われる諸費用に特化したローンを組むことは可能です。しかし住宅ローン控除の対象にもなら図、金利が高く設定されているため、諸費用はなるべく現金での支払いをお勧めしています。
いずれにせよ、無理にフルローンで購入するのではなく、余裕を持って資金計画を立てることが重要だと思います。
まとめ:住宅ローンは「自分に合う銀行選び」が勝負
住宅ローンは「最安金利」ではなく、「審査金利」「年収倍率」「団信条件」「諸費用」を総合的に比較することが重要です。
自宅の買い替えの場合は次のように、まず最初に自宅をAI査定して、「今いくらで売れるか」を確認すると、より現実的な資金計画を考えられます。
- AI査定で自宅の売却相場を知る
- 購入したい物件候補を選定
- ローン事前審査を試す(メガバンク・地方銀行・ネット銀行・フラット35、労働金庫など)