2025年12月更新|土地と建物の権利証(登記済証・登記識別情報)とは何か?取得方法から読み方・保管の注意点まで説明します

映画やテレビドラマでは、土地の権利証を巡る人々の争いが描かれることが珍しくありません。しかし、実際には「土地の権利証(登記識別情報通知書)」と称する書類は存在しませんし、権利証そのものを持つ人に不動産の所有権があるわけでもありません。

不動産の所有者を示す実在の書類は「登記済証」であり、俗称として権利証と呼ばれます。古い建物や土地だと、手書きのものもあります。2005年3月の不動産登記法改正以降は、不動産登記のオンライン化が進んでおり「登記識別情報」も権利証に該当します。

本記事の重要な4つのポイント

権利証は所有権を証明する書類: 不動産の所有者が誰であるかを公的に証明するための、最も重要な書類です。

売却時に必要: 不動産売却時には、売主が正当な所有者であることを確認するために、権利証の提示が必須です。

紛失時の手続き: 再発行ができないため、紛失した場合は司法書士による本人確認情報作成や事前通知制度などの代替手段をとる。ただし手続きには費用や時間がかかる。

保管方法と取り扱い: 不動産売却を検討する際は、権利書(登記済証・登記識別情報)の所在を早めに確認し、厳重に保管することが重要です。特に、登記識別情報通知書の「シール部分」はむやみに剥がさず、そのまま保管しましょう。

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土地や建物の権利証(登記済証・登記識別情報)は登記名義人を示すもの

不動産の権利証とも呼ばれる登記済証・登記識別情報は登記名義人を表示するものです。所有者のほか、地上権者や抵当権設定者も登記名義人として記載されます。

ただし、実際の権利者と登記名義人が一致するとは限りません。日本の不動産登記には公信力がない、つまり「登記名義人は本当の権利者ですよ」と保証されないのです。

不動産登記には公信力がないものの公示力はあり、第三者に対抗するために必要です。たとえば、甲土地の本当の所有者Aが、税逃れ目的でBを登記名義人にし、Bが無関係の第三者Cに甲土地を売ったとします。このケースでCは「私は権利証を見てBさんが甲土地の所有者だと信じた」と主張し、実際に甲土地を購入できます。

以前は「土地や建物の登記済証」が権利証と呼ばれていた

不動産登記とは、土地や建物の権利が変動した際に、その事実を公的な登記簿に記載することです。わかりやすい例としては、土地を売買したり親から子へ土地が相続されたりした場合は、所有権が変わったことを登記します。ただし、当事者間では登記がなくても合意のみで取引が成立します。

登記所(法務局)で不動産を登記した者には、登記官から登記済証が交付されました。不動産の権利が記載されるため、登記済証を権利証と呼ぶことが多かったのです。

不動産の権利証はオンライン化で「登記識別情報」へ

2005年3月7日以降は登記所がオンライン庁と称されるようになり、登記済証ではなく登記識別情報が登記者に交付されることとなりました。つまり現在は登記識別情報が権利証に該当しますが、登記が行われた事実のみを知らせるものとして登記完了証も交付されます。

登記識別情報は数字とアルファベットで構成される12桁の符号、つまりパスワードに似たものです。このパスワードを知っている人が不動産の登記人と判断され、権利証の所持者と同様に扱われます。ただし、権利証は本人確認書類の一つに過ぎず、登記には印鑑証明書等も必要です。

権利証自体に不動産の所有権が付随するわけではない

不動産の権利証、つまり登記済証または登記識別情報は「登記名義人」を示すもので、それ自体に不動産の所有権は付随していません。少し複雑ですが、たとえば権利証を盗んだ人が登記所で「自分はこの不動産の所有者だ。不動産を売却したので登記したい」と言っても、本人確認書類がなければ拒否されます。

仮に盗人が精巧な本人確認書類や印鑑証明書を偽造して登記を行ったとしても、そもそも違法行為なので、事情を知らない第三者に不動産が譲渡されない限りは無効となります。また、現在は登記識別情報によるオンライン申請には電子署名が求められるため、本人確認書類の偽造は困難です。

登記識別情報通知書のシールは剥がさないで

登記識別情報通知書では、一部がシールで覆われている書類として交付されます。このシールの内側に、12桁の英数字の「登記識別情報(パスワード)」が記載されています。

不動産を購入したあと、決済から1か月前後で司法書士事務所から郵送されてくることが多く、「開封して、ついシールをめくってしまったのですが、これどうすればいいですか?」といった相談が、現場では意外とよくあります。

ここで知っておきたいポイントは次の3つです。

  1. シールをめくっただけでは無効にはならない
      シールを一度めくったからといって、その瞬間に登記識別情報が使えなくなるわけではありません。ただし、内側の番号が第三者に知られることが最も危険です。
  2. 番号が漏れると、不正登記に悪用されるおそれがある
      登記識別情報そのものは単なる「パスワード」ですが、もしこの番号と、身分証・実印・印鑑証明書などが偽造されてしまうと、書類上は「本人が権利移転の登記をした」ように見せかけることも不可能ではありません。登記識別情報や本人確認書類を悪用した詐欺(いわゆる地面師)事案は、まれに問題になります。
  3. 登記識別情報は「登記内容を変えるとき以外は使わない」
      登記識別情報が必要になるのは、売却・贈与・住所変更など、登記情報を変更するときだけです。
      日常的に使うことはありませんので、普段は封筒に入れたまま、シールも剥がさず、そのまま保管しておくのが安全です。

不動産を購入したあと、司法書士から届く資料の中に登記識別情報通知書があった場合は、

  • 中身を確認したらシールは剥がさない
  • 保管場所を決めて、そのまま大切に保管する
  • 使うタイミングが来たら、事前に司法書士や不動産会社に相談のうえ持参する

という運用がおすすめです。

なお、これから購入する側の立場で、もし引渡しの段階でシールがすでに剥がされた形跡のある登記識別情報通知書が出てきた場合には、念のため専門家に事情を確認した方が安心です。

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土地や建物の権利証はどうやって取得する?

不動産の権利証である登記済証または登記識別情報は、法務局で登記を行った人に対して交付されるものです。つまり不動産を売買により取得した所有権を登記していれば既に交付されていますので、自ら取得する必要はありません。

登記済証は不動産取得時に登記所で交付された

土地・建物の登記は義務ではありませんが、第三者に対する公示力を持つため通常は実際の権利者が登記されます。

特に不動産会社を介して不動産を売買した場合は、登記が行われないとは考えられません。不動産の売買・相続は所有権移転登記を伴い、新たな所有者が登記名義人となります。

2005年3月7日までは、不動産の所有権移転登記を行うと、新しい登記名義人に登記所の窓口または郵送で登記済証が交付されました。不動産の登記済証は権利証とも呼ばれますが、先に述べたように本人確認書類の一つに過ぎませんから、権利証自体が不動産の所有権を示すものではありません。

登記識別情報は希望者に対し送付される

登記識別情報も登記済証と同じく、2005年3月7日以降に登記所で登記を行った場合は窓口・郵送で交付されます。不動産と登記名義人の情報および登記識別情報が記載されたシンプルな用紙です。ただし、登記時に「登記識別情報の通知を希望しない」と書面で申し出れば、登記識別情報は交付されません。

オンラインで登記申請を行うと、書面ではなくインターネットで暗号化された登記識別情報が登記名義人に送信されます。もっとも、実際には一部の手続きのみオンラインで行う方式が主流であり、登記名義人には従来と同じく書面で登記識別情報が交付されることがほとんどです。

不動産の権利証を紛失しても再発行できる?

不動産の権利証は登記済証・登記識別情報ともに、登記時のみに発行されるものです。そのため、紛失しても再発行してもらうことはできません。ただ、繰り返しになりますが不動産の権利証自体に所有権はありませんから、登記済証・登記識別情報を紛失しても不動産の所有権は失われません。

権利証を持っていない・無くした場合、司法書士が、この人が所有者だという書類を作る費用が必要です。費用はおよそ7〜10万円くらいかかります。本人確認では、マイナンバーと印鑑証明だけでなく、不動産の所有者しか分からない情報を質問をされます。

不動産の権利証が盗まれたら無効にすることが可能

不動産の権利証が盗まれても、他の本人確認書類を添付して登記所に提出しなければ登記を行うことはできません。言い換えれば、免許証・マイナンバーカードや実印、印鑑登録証明書まで偽造された場合は、盗まれた土地の権利証により登記が行われてしまう危険性があります。

特に、登記識別情報通知書に記載された12桁の番号は、登記名義人を確認するための「鍵」にあたる情報です。この番号が第三者に知られてしまうと、本人確認書類や印鑑証明書と組み合わされて、不正登記に悪用されるリスクが高まります。

不動産権利証の盗難・紛失時は、登記名義人本人または相続人が登記官に「不正登記防止申出」と「登記識別情報の失効の申出」をすることで権利証を無効にできます。ただ、無事に権利証を発見できても、司法書士による本人確認が必要です。

不動産の売買と贈与の際に権利証が必要になる

不動産の権利証である登記済証・登記識別情報それ自体に土地の所有権は付随しませんが、持つ人が登記名義人であると推認できます。よって不動産会社に不動産売買の仲介を依頼する際は、権利証の提出が求められるケースがほとんどです。

不動産を売却ではなく贈与、つまり無償で他者に譲る場合も、売買と同じく登記所に権利証を提出して登記する必要があります。なお、売買・贈与ともに登記済証・登記識別情報を紛失した際は、司法書士に依頼して本人確認を行わなければなりません。

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不動産を相続するなら権利証は不要

死亡した人(被相続人)が所有する不動産を配偶者・子などの法定相続人が相続する場合は、権利証を登記所に提出する必要はありません。なぜなら権利証は土地所有者の本人確認書類であり、本人が死亡した場合は本人確認そのものを行えなくなるためです。

もっとも、不動産相続の場合は権利証のかわりに戸籍謄本と住民票、遺産分割協議書など別種の書類が必要になるため、手続きが簡略化されるわけではありません。

相続登記が終わっていなくても売却は可能。ただし手続きには注意が必要

相続した不動産については、相続登記が完了していなくても売却手続きを進めることが可能です。

遺産分割協議がまとまり、相続人が誰になるかが確定していれば、売買契約の締結までは遺産分割協議書をもとに進められるためです。ただし、決済(引き渡し)までには相続登記を完了させておく必要があるため、通常は売買契約から引き渡しまでの間(1〜2か月ほど)で相続登記を済ませます。

なお、相続登記が済んでいない段階では、相続人全員が売却金額や条件に合意していることが必須です。

例として、遺産分割協議の結果「長女が代表して売却手続きを行う」と定めていても、財産を兄姉弟3人で分ける(換価分割)と明記されている場合には、3人全員が売買条件に同意していないと売買契約そのものが無効になる可能性があります。

逆に、相続登記が完了している場合は、登記簿に記載された相続人が正式な所有者として扱われるため、不動産会社や買主は遺産分割協議書の内容を確認しません(=登記が優先されます)。

相続前後で不動産売却の扱いはこう変わる

  • 契約まで:遺産分割協議書で相続人が確定していればOK
  • 決済まで:相続登記が必須
  • 相続登記前:相続人全員の同意が必要(最重要)
  • 相続登記後:登記簿上の所有者の意思で売却できる

権利証は登記に欠かせない!忘れずに準備しよう

権利証と呼ばれることが多い登記済証・登記識別情報は、不動産登記をする際に必要な書類です。権利証自体に不動産所有権はありませんが、登記名義人である証明として用いられます。紛失しても所有権は失われませんが、司法書士等に依頼する必要が生じるため、忘れず丁寧に保管してください。

不動産を売買する機会は突然訪れるため、権利証の所在をあらかじめ確認しておくことが大切です。特に、登記識別情報通知書については、シールを剥がさず、番号が外部に漏れないように保管することを心がけましょう。

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