農地の売買取引について

「地目(ちもく)」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?

土地には23の地目(種類)があります。

主なものでは住宅などの建物を建てる目的で使用される「宅地」、農業で利用される「田」や「畑」、そのほかには「道路」や「公園」などが挙げられます。

今回はその中でも「田」や「畑」などの農地の売買取引について取り上げたいと思います。

都心部でも農地を宅地に転用して、建物を建築するケースが数多くありますので、それぞれの内容を把握した上で実際の売買取引に活かして頂ければと思います。

農地の取引を制限する農地法

日本の不動産取引に関する基本的な考え方として、「農地を守ろう!」という価値観が根幹にあります。

農地法にも「農地は国内の限られた貴重な資源であり、耕作者自らによる農地の所有が果たしている重要な役割も踏まえ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに…(農地法第1条より)」と定められています。

農地法においての農地とは、耕作の目的に利用される土地のことをいいます。

ここで注意しておきたいのが、登記簿謄本の地目が農地(田や畑と表示)だとしても、実際に農地として利用されていなければ農地の扱いにはなりません。

つまり、登記簿では田や畑と表示されていても、住宅やビルなどの建物がその土地に建っていれば宅地としてみなされてしまいます。

なお、田や畑のほかに、現況が休耕地、果樹園、林業種苗地、蓮池、採草放牧地なども農地に含まれているため、売買取引の規制対象になってしまいます。

農地を売買、転用する場合の許可と届出

ここでは農地を売買や転用する際の具体的な制限内容について取り上げていきたいと思います。

農地の売買や転用については、大きく「許可制」と「届出制」に分かれます。

農地の所有権などの権利の移転、農地から宅地へ転用や転用を目的とした売買には、原則としてその農地が所在する都道府県知事の許可が必要となります。

ただし、これには例外措置が設けられており、市街化区域内の農地の転用や転用を目的とした売買などについては、許可ではなく管轄する農業委員会への届出だけでOKとなっています。

農地法3条

農地の所有権の移転、地上権・賃借権の設定や移転をする場合は、都道府県知事の許可が必要です。

農地法4条

農地を宅地などの農地以外のものに転用する場合は、都道府県知事の許可が必要です。

農地法5条

農地を宅地などの農地以外のものに転用することを目的として、所有権の移転、地上権・賃借権の設定や移転をする場合は、都道府県知事の許可が必要です。

※ただし、市街化区域内の農地の転用や転用を目的とした売買については、許可ではなく、管轄する農業委員会への届出だけでOKとなっています。転用を伴わず農地のまま売買する場合は、市街化区域内外に関わらず、許可が必要となります。

おおよその目安として、許可は申請から1ヶ月~1ヶ月半程度、届出は申請から1週間程度で受理されると考えておけばよいでしょう。

都心部は、ほとんどが市街化区域に入っているので、実際に農地を取引する場合は、許可ではなく、農業委員会への届出のみというケースがほとんどだと思います。

いずれにせよ、不動産仲介会社が手続きのアテンドをしてくれますので、農地の取引だからといって心配する必要はありません。

実は節税になる農地

ここまでは農地の売買や転用を中心に説明してきました。

最後は農地のままで保有していた場合のメリットを簡単に紹介したいと思います。

農地の最大のメリットは税金です。

不動産を保有していると固定資産税が毎年課税されますが、宅地と比較すると農地はかなり安く設定されています。

これが昨今問題になっている耕作放棄地の増加に繋がっている1つの理由だと思います。

しかし、最近になって、政府主導により農地改革が進めらており、今後は法人の農業ビジネス参入なども増加していくと思われます。

住宅供給過多の現状を考えると、農地を宅地へ転用するより、農地のまま農業を発展させた方が不動産マーケットの歪みを正す意味でも必要なのかもしれません。