マンションにかかる相続税について|手続きや計算方法とは?【2024年最新版】

身内が亡くなると、遺産相続が発生します。遺産を故人から相続すると相続税が発生します。

もし分譲マンションを相続した場合は、相続税と残りの住宅ローンに注意しましょう。ローン完済後のマンションは相続税を支払い、そのまま利用もできます。また相続人の判断で売却し、住宅ローンの残金に充てたり、売却額を相続人で分割したりすることもできます。

本記事では、マンションを相続した場合に注意すべき相続税の手続きの流れ、複数人で相続した場合の相続税の計算方法や税控除・特例、相続税対策について説明します。

一般的な不動産の相続税と共通する部分が多いですが、マンション特有の事情も考慮する必要があります。特に「小規模宅地等の特例」の適用条件は、マンションの相続税対策を考える上で重要なポイントの1つです。損をしないために、適切な対策を講じることが大切です。

マンションを相続発生後の手続き流れ

遺産相続の中でマンションを相続した場合、相続発生後にさまざまな申請手続きを行います。

  1. 相続人を決定、相続するか相続破棄するかを決める
  2. 法務局で相続登記(相続財産の名義を変更)を申請する
  3. 相続税を申告・納付する

1. マンションの相続登記/所有権移転登記

故人が所有していたマンションを相続したときは、相続登記が必要です。

該当マンションの建物と土地の所有権移転登記を申請すると、マンションの名義が被相続人(故人)から相続人に名義が変更されます。

特に以下の4つは期限があるので早めに手続きの準備を行いましょう。

  • 相続放棄(3か月以内)
  • 相続登記(3か月以内)
  • 故人の確定申告(4か月以内)
  • 相続税を申告し納付する(10か月以内)

1. 相続人を決定、相続するか相続破棄するかを決める

相続する人が遺言書を残していないかや、遺産総額を確認します。そして相続人全員で遺産分割協議を行い、相続人を決定します。この時、遺産放棄をする場合は3か月以内に手続きが必要です。

2. 法務局で相続登記(相続財産の名義を変更)を申請する

マンションの相続登記を申請し、名義を変更します。3ヶ月以内に法務局へ申請を行う必要があるため、相続人が決まり次第、申請に必要な書類を取集・申請準備を進めます。

相続登記に必要な書類

相続登記には多くの書類が必要です。被相続人と相続人双方の書類が必要になります。

・登記申請書(法務局のホームページからもダウンロードできます)
【被相続人】
不動産の登記事項証明書、住民票の除票(本籍があるもの)、戸籍謄本(出生から死亡まで)
【相続人】
戸籍謄本・印鑑証明書:相続人全員
住民票:不動産を取得する相続人、固定資産評価証明書
遺産分割協議書または遺言・相続関係説明図:(申請者が作成)

相続登記の手続きに必要な登録免許税の計算方法

マンションの相続登記の手続きには「登録免許税」がかかります。原則として現金納付になり、銀行などで支払います。相続登記申請を行った際、納付した領収書を申請書に貼り付け法務局に提出します。

登録免許税は「不動産価額(評価額)× 0.4%」で計算できます。

※不動産価額は固定資産評価証明書に記載されています。


計算例)不動産価額が15,048,480円の場合、
登録免許税=15,048,000(不動産価額1,000円未満切り捨て) × 0.4% ≒ 48,000円(100円未満切り捨て)
なお、登録免許税が1,000円未満の場合はすべて1,000円となります。

名義変更は自分で申請できますが、上記のように相続登記は必要書類が多く、税務・不動産・法務など多岐にわたる専門知識が必要なため、時間と労力がかかります。さらに手続きによっては対応期限があります。漏れなく確実に申請手続きを進めたいのであれば、早めに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

4. 相続税を申告し納付する

相続したマンションにかかる相続税は、財産としての資産価値に直接課税されるのではなく、「相続税評価額(建物と土地)」「控除額」「税率」をそれぞれ考慮して算出されます。そしてマンションを2024年1月1日以降に相続する場合は、マンションの建物と土地の評価額について「一定の補正を行う」ように計算方法が変わります。

  • 相続税評価額:マンションの場合は、評価額を建物部分と土地部分に分け、最終的に合算して算出します
  • 控除額:相続税が控除される額で、控除額範囲であれば相続税が0円になる場合もあります
  • 税率:相続税評価額に対し課税される割合

他の不動産と異なるのは、小規模宅地等の特例の適用可否を確認する必要がある点です。

相続税の申告と納税は、税理士などの専門家に依頼するとスムーズです。

マンションの相続税の計算方法

マンション相続税評価額は、建物部分の相続税評価額+土地部分の相続税評価額で算出できます。

マンションの建物部分の相続税評価額(補正前)の計算方法

建物部分相続評価額=固定資産税の評価額、マンション購入価格の70%に相当します。確認方法は、固定資産税納税通知書の「家屋の固定資産税評価額」を参照ください。

もし課税明細書を紛失した場合、市町村役場(東京23区では都税事務所)で交付してもらえる「固定資産評価証明書」で評価額を確認できます。

マンションの土地部分の相続税評価額(補正前)の計算方法

土地の評価額 は「路線価」が定められているかどうかで異なります。路線価は国税庁が定める公的な価格のことです。

  • 路線価あり:土地部分相続税評価額=路線価(1平米当たり)×マンション全体(専有部+共有部)の面積(平方メートル)× 自分の持分割合(自分が専有している面積)
  • 路線価なし:土地部分相続税評価額=固定資産税の評価額 × 財産評価基準書に定められた税率 × 自分の持分割合

土地の価格については、次の記事に詳しく説明しています。併せてご覧ください。

持分割合は、マンションの売買契約書や登記簿の「敷地権の割合」と記載されている部分を確認しましょう。

改正後の相続税評価額(補正後)の計算方法

マンションの評価方法が改正され、2024年1月1日以降に相続した場合は「区分所有補正率」を導入しマンションの建物と土地の価額を補正します。

法改正の背景としては、戸建て住宅の相続税評価額は市場価格の6割程度となる一方で、分譲マンションの中でも特にタワーマンションでは3~4割程度と、相続税評価額が市場価格と大幅に乖離していることが問題になったためです。詳しくは国税庁の「居住用の区分所有財産」の評価が変わりましたをご覧ください。

区分所有補正率の算定方法は、国税庁が公開するExcelの計算ツール「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」をご利用ください。

上記の国税庁の計算ツールに、

  1. マンションの築年数(1年未満の場合は1)
  2. 総階数(地下階は含まない)
  3. 所在階(複数階数にまたがる場合は低い階、地下の場合は0とする)
  4. 建物の専有部分の面積
  5. 土地の面積
  6. 持分割合(自分が専有している面積)

の6つの項目を入力するだけで、区分所有補正率を求めることができます。

なお、マンションの相続税評価額の補正に使う「区分所有補正率」は、「評価水準」により変わります。そして評価水準・評価乖離率は、上記の国税庁の計算ツールで算出されます。

評価水準区分所有補正率相続税評価額(補正後)を算出する計算式
1より大きい評価乖離率相続税評価額(補正前)×評価乖離率
0.6以上1以下補正なし相続税評価額(補正前)と同じ
0.6未満評価乖離率×0.6相続税評価額(補正前)×評価乖離率×0.6

なお、上記の評価乖離率を求める計算式は2024年4月現在の数値で、適時見直しを行われる予定です。最新の情報は国税庁の情報をご確認ください。

相続税に適用される基礎控除と配偶者控除の計算方法

【基礎控除】基礎控除金額=3,000万円+(相続人数×600万円)
基礎控除は相続対象者全員が対象となり、相続人数が多いほど基礎控除額が大きくなります。

「基礎控除額 ≧ 相続評価額」基礎控除額が相続評価額を超える場合は、相続税は発生せず申告する必要がありません。
※基礎控除は、ほかの控除とも併用できます。
【配偶者控除】配偶者の法定相続相当額 = (相続評価総額 – 基礎控除額)×相続人の割合
配偶者控除額は、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか大きい額を選べます。
「配偶者控除額>相続税評価額:課税されない」
※配偶者控除は基礎控除と併用できますが、配偶者のみ適用されます。
例)1億円のマンションを配偶者と子ども2人で相続
・基礎控除額=3,000万円+(3人×600万円)=4,800万円
・配偶者の法定相続相当額=(1億円 – 4,800万円)×1/2=2,600万円<1億6,000万円
・控除額=4,800万円+1億6,000万円=2億800万円

マンションの相続税率と控除額は評価額によって変わる

マンションの相続税率は、相続税評価額の金額により異なります。相続税評価額の金額が高くなると、税率も比例して高くなりますが、控除額も大きくなります。

相続税評価額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円
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マンションの相続税対策

相続税に適用される控除を使用しても、相続の内容によっては課税対象になるものがあります。

このように控除額を上回った場合でも相続税を節税・軽減できる制度があります。土地評価額の減額、生前贈与など特例を利用することにより、相続税の負担が軽減されます。課税対象になったとしても節税方法はあります。まずは次の3つの特例・制度の内容を理解しましょう。

1. 小規模宅地等の特例:相続する土地が330平米以下は土地の評価額を80%減額できる

「小規模宅地等の特例」は、相続する土地が330平米以下のとき、土地の評価額を80%減額できる制度です。

被相続人と相続人が、居住用として相続した土地に同居していたこと、継続して住むことが条件となり、配偶者は無条件で適応されますが、土地の相続のみに使用できる制度です。

しかし、マンションの場合、土地と建物の評価額は分けて算出されるため、マンションを相続したときにも適用できる可能性があります。

例)相続したマンションの土地全体が1,000平方メートルの内、持分の割合が100分の1であると、相続した土地は10平方メートルになります。小規模宅地等の特例が適用でき、土地の評価額を80%減額できます。

2. 相続税を取得費に加算する特例:売却価格<現在の評価額の場合は課税対象が縮小できる

相続したマンションを売却する場合、売却価格が評価額を下回ると課税対象が縮小され相続税が安くなります。

しかし、売却価格が評価額を上回ると課税対象が拡大され相続税が高くなるので、売却のタイミングを注意してください。「売却価格<現在の評価額」が前提条件になりますから、評価額を確認してから売却時期を検討しましょう。

「相続税を取得費に加算する特例」は、相続税の一部をマンション取得費に加算し、譲渡所得を減らし所得税の負担を抑える制度です。手続きは確定申告で行います。

3. おしどり贈与:贈与税に適応される配偶者控除

「おしどり贈与」は、夫婦間における生前贈与の特例で、贈与税に適応される配偶者控除のことです。

婚姻の期間が20年以上の夫婦が、マンションも含む居住用不動産や住宅を取得するための資金を生前贈与した場合、2,000万円まで控除を受けられる制度です。将来の相続分の内、先に2,000万円贈与しておくことで将来の相続税を減額できます。

ただし、おしどり贈与は、同一の相手には1回しか使用できません。再婚相手には使用できますが、20年以上の婚姻期間が条件になるので注意しましょう。

マンションの相続税は専門家への相談から始めよう

マンションを相続する場合、さまざまな手続きが必要なり税金も発生します。

自分で手続きを進めることもできますが、もし相続税対策についてどこに相談に行けば良いか分からない場合は、以下の6つの専門家に相談すると良いでしょう。

  • 税理士:相続税の仕組みや計算方法に精通しているので、マンションの評価額試算や節税対策の提示を通じて、相続対策の方向性を絞り込むことができます
  • ファイナンシャルプランナー:相続人の資産状況や将来設計を考慮しながら、マンション以外の資産も含めた総合的な相続対策を提案してもらえます
  • 司法書士:相続財産の調査や分割協議書の作成、不動産登記(相続登記、所有権移転登記など)の申請手続きなど手続きの煩雑さを軽減できる、法的トラブルの予防や解決に関する助言をもらえます
  • 行政書士:建築確認申請・開発許可申請などの許認可手続きや、相続税申告書などの書類作成、各種手続きの代行など、幅広い業務を依頼できます
  • 不動産会社:マンションの売却や賃貸管理の実務を担当し、相続税対策としてのマンション活用方法を提案してもらえます
  • 不動産鑑定士:マンションの適正な価格の査定を依頼できます

マンションは簡単に分割して相続できるものではないので、遺産として相続する場合は、さまざまな申請や手続きが必要になります。特に相続人が複数存在する場合は、手続きも煩雑で必要書類の収穫も多くなります。

第三者として客観視できる専門家に依頼し、公正な判断を仰ぐことをおすすめします。

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