「気に入った物件が見つかった!でも、住宅ローンの審査に通るか不安…」
マンション購入で最大のハードルは、実は「物件選び」ではなく「住宅ローン審査」です。
– 「年収500万円だけど、4,000万円のマンションは無理?」
– 「車のローンが残っているけど大丈夫?」
– 「提携ローンって本当にお得なの?」
こうした不安を抱えたまま、不動産会社に「とりあえず提携ローンで申し込みましょう」と勧められるまま進めてしまうと、審査落ちや金利で数百万円の損をするリスクがあります。
そこで第5回目は、住宅ローン手続きの全体像と、審査に通るための事前準備、不動産業者から勧められる提携ローンのメリット・デメリットについて紹介します。
連載の他の記事も合わせてご活用ください。
はじめてマンションを買う前に知っておきたい知識① 〜マンションの価値〜
はじめてマンションを買う前に知っておきたい知識② 〜新築?中古?〜
はじめてマンションを買う前に知っておきたい知識③ 〜価格決定の仕組み〜
はじめてマンションを買う前に知っておきたい知識④ 〜坪単価と徒歩分数表示〜
はじめてマンションを買う前に知っておきたい知識⑤ 〜住宅ローン〜 ←本記事
はじめてマンションを買う前に知っておきたい知識⑥ 〜ローン限度と諸費用〜
はじめてマンションを買う前に知っておきたい知識⑦ ~契約手続き~
住宅ローン契約の流れとは?
住宅ローン契約は、
- 事前審査申込
- 事前審査結果通知(申込みから1週間ほどで結果が通知される)
- 事前審査結果通知と併せて、マンションの購入申込書を提出 ※マンション売買契約締結もこのタイミングです
- 正式申込
- 締結済の不動産売買契約書を根拠に住宅ローンの正式な申込みをします
- 審査結果通知(申込から1ヶ月ほどで結果が通知される)
- ローン契約
- 抵当権設定登記&融資実行
- 基本的にマンション引渡し時(決済時)と同日に行います
といった流れが一般的です。
金融機関によって異なりますが、1番最初の事前審査申込から融資が実行されるまで約1ヶ月前後の期間を要します。
上記の通り、ローン契約の正式な申込みはマンションの売買契約締結後です。事前に不動産会社の担当者とよく相談して、スムーズに進められるように確認しておきましょう。
金融機関から見て、申込者の経済的与信に不安がある場合は、審査期間も長引く傾向があります。
一方、公務員の方などは、事前審査申込から3日後に通過通知を受け、融資実行までの全ての期間も2週間程ですんなり完了したいったこともあります。
なお住宅ローンには、民間の金融機関が融資するタイプや、住宅支援機構のフラット35など公的な融資もあります。さらに金利も変動型や固定型など様々な商品から選びます。
住宅ローン審査に落ちる原因ワースト5
| 順位 | 原因 | 対策 |
| 1 | クレカ・スマホ料金の延滞履歴 | CIC(信用情報機関)で自分の履歴を確認(500円で取得可能) |
| 2 | 年収に対して借入額が高すぎる | 済比率(年収の25〜35%)を事前計算する。 |
| 3 | 他のローン(車・教育ローン)が残っている | 住宅ローン申込前に、可能な限り完済する |
| 4 | 転職直後(勤続1年未満) | 勤続3年以上が理想。1年未満の場合はフラット35も検討 |
| 5 | 個人事業主で収入が不安定 | 直近3年分の確定申告書を用意。赤字年度があると厳しい可能性も |
事前審査と本審査の間に「転職」「新たな借入」をすると、本審査で落ちる可能性があります。
詳しくは、はじめてマンションを買う前に知っておきたい知識⑥ 〜ローン限度と諸費用〜をご覧ください。
提携ローンと非提携ローンどちらを選ぶ?メリットとデメリットを比較
よくマンション広告などに、購入した場合の毎月の返済額シミュレーションが出されていますが、詳しく見てみると「当社提携ローン金利の適用時」と記載されていることが多くあります。この提携ローンとは、マンションの売主であるデベロッパーが特定の金融機関と提携して、提供する住宅ローンのことです。
逆に非提携ローンとは、売主と提携していない金融機関が提供する住宅ローンのことで、買主が自ら銀行を探し、ローン契約の手続きをするかたちになります。
提携ローンは売主と金融機関が提携しているため、手続きが比較的簡単で、金利等の諸条件も非提携ローンよりも優遇されるなど、買主が受けるメリットも大きいです。
提携ローンと非提携ローンを比較すると下記のようになります。
提携ローン
◆メリット
- 物件の担保評価が事前に完了しているため、審査のスピードが非提携ローンと比べ早い
- 売主がローン手続きを代行してくれるので、手間がかからない
- 金利が優遇されるケースが多い(0.1〜0.2%程度)
◆デメリット
- 自分が希望するローン条件では無い場合がある
- 不動産会社への融資手数料(借入額の1〜2%)が別途かかる場合があります
非提携ローン
◆メリット
- 自分の好みに合った金融機関でローンを組むことができる。選択の自由がある
- 融資手数料を支払う必要がない
◆デメリット
- 金融機関の選択から手続きの全てを自分で行わなければならず、手間と時間を要する
つまり提携ローンを選ぶ前に、「手数料込みの総額」で比較することが必須です。
金利の決定は融資実行の時点
最後に住宅ローンで皆さんがよく勘違いされている金利決定の時点について解説します。
実は住宅ローン金利は固定型・変動型に関わらず、ローン申込みの時点ではなく、融資が実行された時点の金利が適用されます。
先ほどご説明したようにローン手続きは1ヶ月ほど期間を要します。
1ヶ月であれば申込時点と融資実行時点で大きく金利が乖離することは、ほとんどありません。
しかし、新築未完成マンションの購入の場合などは、引渡し(=融資実行)まで1年以上先というケースもありますので注意が必要です。この期間に金利が下がる可能性もありますが、資金計画は余裕を持って立てることをお勧めします。
なぜ「複数の銀行で事前審査」を受けるべきなのか?
住宅ローンは、1社だけで決めてはいけません。3社程度の事前審査を同時申し込みするのがおすすめです。
理由①:審査基準が銀行ごとに全く異なる
– A銀行:「勤続3年以上必須」→ 落ちる
– B銀行:「勤続1年以上でOK」→ 通る
理由②:金利・団信条件が大きく違う
– メガバンク:金利0.7%、ワイド団信なし
– 地方銀行:金利0.6%、ワイド団信あり(+0.3%)
理由③:時間的なロスを防げる
– 1社ずつ審査→ 落ちたら次→ 落ちたら次… → 2ヶ月かかる
– 3社同時審査→ どれか1社通ればOK → 1週間で決まる
「複数申し込みすると審査に不利」は誤解です。事前審査の段階では、複数行に申し込んでも信用情報に悪影響はありません。
変動金利 vs 固定金利、どっちを選ぶ?
2025年は、日本銀行が政策金利を0.5%に引き上げ、変動金利も上昇局面に入っています。
変動金利と固定金利の比較
| 項目 | 変動金利 | 固定金利(全期間) |
|---|---|---|
| 現在の金利 | 0.5〜0.7% | 1.5〜2.0% |
| 月返済額(3,500万円・35年) | 約90,483円 | 約115,941円 |
| 総利息額 | 約296万円 | 約1,369万円 |
| 金利上昇リスク | あり(5年ごとに見直し) | なし(完済まで固定) |
| 向いている人 | ・繰上返済で早期完済を狙う ・金利上昇時に対応できる余裕資金がある | ・返済計画を確定させたい ・金利上昇が怖い |
金利の種類の判断基準
- 変動金利を選ぶべき人: 今後5年以内に繰上返済で完済予定の人
- 固定金利を選ぶべき人: 「金利が上がったらどうしよう」という不安で眠れなくなる人[web:76]
変動金利は今後0.5%→1.0%以上に上がる可能性があります。その場合、月返済額は約5,000円増加します。
住宅ローンで失敗しないための5ステップ
住宅ローンは「不動産会社に任せればOK」ではありません。自分で動いた人だけが、しっかり比較できるので、結果的に数百万円の得をしたという場合もあります。
今すぐやるべき5つのアクション
ステップ1:自分の信用情報をCICで取得(500円)→ 延滞履歴がないか確認
ステップ2:借入可能額を試算 銀行のローンシミュレーターを使って「現実的な予算」を把握
ステップ3:複数の金融機関で事前審査 提携ローン1社 + 非提携ローン2社などの計3社以上に同時申し込み
ステップ4:金利タイプを選ぶ – 変動金利 vs 固定金利の総返済額を比較 銀行のシミュレーターで、金利上昇時の返済額を確認
ステップ5:提携ローンの「手数料」を確認 – 金利優遇で得した額 > 手数料 なら提携ローンを選ぶ
次回(第6回)では、「借入限度額の計算方法」と「意外と高い諸費用」について解説します。