売買契約のここを押さえよう-売主が不動産業者の場合に買主を保護する特約-

不動産売買契約書を煩わしいと思っている方へ、ここだけは押さえてほしいポイントをお伝えしていきます。

今回は、売主が不動産業者の場合に買主を保護する特約について、5つご紹介します。

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売主が個人か不動産業者かで契約内容が違ってくる?

不動産を購入する際、特に重視するものは物件概要と価格だと思います。

価格が高くて予算が合わないとか、物件そのものが希望条件と合わないから購入を見送るというのは、よくあることです。

ほとんどの方は売主が個人であるか不動産業者であるかを購入する際の判断基準にしていないと思います。

もちろん、不動産を選ぶ際に物件概要と価格を重視するのは間違っていません。

しかし、売主が個人であるか不動産業者であるかで契約書の内容は違ってきます。

売主が不動産業者の場合、個人の買主は契約上有利な立場に立つことができるのです。

つまり、買主保護の契約内容になるということです。

売主が誰かで物件を購入する決め手にはならないにせよ、契約内容に差が出るということを頭の片隅に入れておくことに損はないと思います。

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不動産業者が売主の場合の契約の詳細

では、実際に不動産業者が売主の場合、具体的にどのような契約内容になるか、具体的に5つの特約を説明します。

1. 損害賠償額の制限

契約違反に伴う損害賠償の金額を定める際は、不動産売買代金の20%を超えてはならず、20%を超えた金額は無効となります。

個人が売主の場合は特に制限がありません。

但し、社会通念上から乖離した法外な金額は無効となる場合があるようです。

2. 手付金の制限

売主である不動産業者が受け取れる手付金は、不動産売買代金の20%未満となります。

また、その手付の内容を問わず、強制的に解約手付の性格を併せもつものとみなされます。

3. 手付金の保全措置義務

不動産業者が倒産などの不測の状態に陥った際、物件の引き渡しや事前に買主から受け取った手付金の返還ができなくなることを防ぐための保全措置義務です(個人売主の場合、保全措置の義務はありません)。

原則として、不動産業者が金融機関に保全措置を講じた後でなければ、一定限度を超える手付金を受け取ってはいけない決まりになっています。

※一定限度とは・・・未完成物件は物件価格の5%を超えるか1,000万円を超える場合。完成物件は物件価格の10%を超えるか1,000万円を超える場合となっています。

4. クーリング・オフ

クーリング・オフ(申込み撤回・契約解除)とは買主は、ある一定の条件を満たした場合に限り、一度締結した売買契約をペナルティ無し(手付金などは全額返還)の白紙解除できる制度です。

一定の上限とは、宅地建物取引業法第37条の2の第1項によると

  • 売主の事務所等(※)で申込みや契約締結をした場合
  • 宅建業者からクーリングオフできると書面で告げられた日を含めて8日以内に書面で通知する(内容証明の郵送の場合は、送付した日が翌週の同じ曜日までは可能)
  • 代金を全額支払い前、かつ、不動産の引き渡し前
  • 上記3つのルールに反する特約は、買主に不利なので無効となる

なお、最近では申込書をメールで送付したり、オンラインで売買契約を締結する場合もありますが、これらも事務所等であれば、クーリングオフが可能です。また、内容証明郵便については24時間受付可能な、e内容証明(電子内容証明)も利用できます。

※事務所等とは、買主が冷静に判断・契約ができる場所のこと。買主が自ら申し出て、自分の勤務地・自宅で締結した場合はクーリング・オフできないが、喫茶店のような場所はクーリング・オフが可能。

5. 契約不適合責任(瑕疵担保責任)の適用期間

おそらくこの契約不適合責任の特約が、買主にとって最大のメリットだと思います。

売主が不動産業者の場合、契約不適合の責任期間を「物件の引き渡しの日から2年以上」とする特約以外は、無効となります。

つまり、不動産業者は最低でも引渡し後2年間は、契約不適合の責任を負ってくれるのです。

もし売主が個人だったら、基本的に契約不適合の責任期間は「物件の引き渡しの日から3ヶ月」となってしまいます。

個人から中古物件を買うと引渡しを受けてから3ヶ月経過して発見した契約不適合については、買主は売主へ責任追及ができません。

3ヶ月と2年の差は非常に大きいと思います。

※補足・・・新築住宅(未使用で、且つ完成後1年を経過していない物件)については、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、建物の基礎、土台、柱、屋根、外壁などの基本構造部分に瑕疵があった場合は、引渡し後10年間は不動産業者が責任を負う義務があります。

売主が不動産業者というケースは、新築マンションや新築建売住宅がメインですが、最近は中古物件を不動産業者がリフォームして再度売りに出す、いわゆる「リノベーション物件」もよく見かけるようになりました。

今後はこのような中古物件の流通が増加すると予測されますので、売主が不動産業者の際には、契約内容がどのように違うのか事前に予習しておくことで、手続きをスムーズに進めることができると思います。

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