2017年公示地価から不動産市況を読み解く③

前回前々回と現在の不動産市況を2017年の公示地価から読み解いてきました。

最後となるこのコラムでは、西日本の地方都市における地価動向と全国都道府県別の地価変動率をチェックしていきたいと思います。

はたしてどのような結果になったのでしょうか?

関西エリア・九州エリアの地価動向

関西エリア

大阪府の商業地は、前年比5.0%の上昇を記録しました。

昨年に引き続き、商業地の上昇率では47都道府県でトップとなっています。

一方で住宅地は、前年比変動なしという結果になりました。

大阪府の商業地で特に目立ったのが、中央区道頓堀1丁目地区で、なんと41.3%の上昇となりました。

やはり訪日外国人観光客の効果が大きいようで、ホテル開発需要による地価の押し上げが目立つ結果となりました。
京都府の商業地は、前年比4.5%の上昇となり、大阪府と同様に地価上昇の力強さが目立つ結果となりました。

特に観光地で有名な祇園地区の上昇率が高く、同区内の一部地点では、前年比29.2%の上昇を記録しています。

ちなみに住宅地は、こちらも大阪と同じく前年比で変動なしとなっています。
他の関西エリアの県では、兵庫県や奈良県などは、商業地は上昇を見せたものの、住宅地は昨年に続き下落となっています。

また、和歌山県にいたっては、商業地-1.4%、住宅地-1.8%と関西エリアでは、突出して下落が目立つ結果となりました。

関西エリア全体で見ると、商業地は好調の様ですが、住宅地については、まだまだ地価回復には至っていないのが現状のようです。

九州・沖縄エリア

福岡県は、住宅地が1.1%、商業地が2.7%の上昇となりました。

関西、中部エリアでは商業地の上昇が多く、住宅地は横ばいか下落という結果でしたが、福岡県は住宅地も前年比で1%超上昇しています。

アパートの建設ラッシュなどに加えて、九州大学跡地の大規模再開発なども住宅地の上昇に寄与したようです。

ちなみに昨年話題になった、博多駅前で起きた「道路陥没事故」ですが、幸いにも地価への影響は軽微だったようです。

福岡県以外の九州の都道府県は、全て住宅地、商業地ともに下落という結果になり、福岡1強という流れが加速しています。
沖縄県は、住宅地が3.5%、商業地が5.0%の上昇となりました。

商業地は4連続の上昇となり、ホテル開業などの土地需要が強まりました。

住宅地についても今年で4連続の上昇となり、上昇幅も昨年より1.3%増と強い伸び率となりました。

沖縄県は地理的に他の都道府県と比べて特殊性が強いため、単純に比較することは難しいですが、観光需要により順調に地価が上昇しているようです。

都道府県別の地価変動率の動向

最後に、昨年と比べて地価の変動率が大きかった都道府県を中心にピックアップしてみました。

どうでしょうか?お住まいの都道府県の地価は上がりましたでしょうか?それとも下がってしまいましたでしょうか?

下落率が大きい都道府県

住宅地 商業地
青森県 -1.2% -1.4%
秋田県 -2.7% -3.2%
新潟県 -1.4% -2.1%
福井県 -1.4% -1.2%
三重県 -1.6% -1.6%
島根県 -1.6% -1.9%
鳥取県 -1.6% -2.0%
愛媛県 -1.8% -1.9%
鹿児島県 -2.0% -2.2%

上昇率が大きい都道府県

住宅地 商業地
宮城県 +2.4% +4.7%
福島県 +2.1% +0.8%
千葉県 +0.2% +1.4%
東京都 +1.9% +4.7%
神奈川県 +0.0% +1.6%
愛知県 +0.6% +2.4%
京都府 +0.0% +4.5%
大阪府 +0.0% +5.0%
広島県 +0.2% +1.5%
福岡県 +1.1% +2.7%
沖縄県 +3.0% +3.2%

2017年の公示地価を総括すると、「外国人観光客効果による商業地の上昇」と「都市と地方の更なる2極化」の2点に纏まるかと思います。

筆者が特に注目したのが、地価の2極化といっても、これまでのように単純に都市圏と地方圏による格差ではなく、都市圏のなかでも勝ち組、負け組に分かれる流れになってきていることです。

今後も地価の2極化は加速すると思いますが、日本の人口が年々減少する中で、このような地域格差に対して、どのように向き合わなければならないのか、不動産市況を考える上でも、とても重要な課題だと思います。