不動産相続は自分でできる?手続きや費用について詳しく解説

不動産相続の手続きの流れ

不動産相続の手続きの流れ

亡くなった家族や親戚が不動産を所有していた場合、不動産相続の手続きが必要になります。

相続の手続きをするためにやるべきことはたくさんあります。

また手続きに必要な書類を作成して10か月以内に相続税を納める必要があるので、なるべく手際よく不動産相続の手続きを進めていかなければいけません。

一般的な流れとしては、故人の葬儀を終えて四十九日が過ぎたころから遺産の整理を始め、相続する手続きを行います。

遺言書を確認する

まず故人が遺言書を残していないか確認します。

故人が自分で書いた遺言書が見つかったら、開封しないで家庭裁判所に持ち込んで遺言の中身を確認してもらう必要があります。

また、公正証書として遺言を作っているなら公証人役場で調べてくれるので問い合わせましょう。遺言の内容によって相続に関わる人が誰かわかるので連絡を取って話し合いをします。

遺言書がない場合は、民法にのっとり相続できる人同士で協議し遺産を相続します。

相続人の出生から現在までの戸籍謄本を集める

相続人が分かったら、相続人全員の戸籍謄本を集めます。戸籍謄本は相続関係を証明するために必要です。

不動産相続の手続きには、故人が亡くなった日以降の相続人全員の戸籍謄本と相続人全員の印鑑証明書、また故人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本を準備します。

転勤などであちこちに住んだことがある場合は、すべてを取り寄せるのに時間がかかることもあるので早めに取り掛かりましょう。

また故人の本籍が記載されている住民票の除票も必要です。

債務があるか調べる

故人から相続するものは、不動産、預貯金、現金、株式など有価証券、会員券、生命保険などの資産だけではありません。

もしも故人に借金があったときは、それらも相続することになります。債務が膨大な場合は、遺産を相続しても手元に残らないこともあります。そのときは、自分が相続人の権利があると分かったときから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申し立てを行えます。

相続放棄をすると借金の返済義務がなくなりますが、遺産も相続できなくなります。

もしきちんとした遺産相続をする前に、故人の現金や資産を使ってしまったり、換金してしまったりすると、相続放棄はできないので注意が必要です。

準確定申告を行う

準確定申告とは、故人が毎年不動産所得などで確定申告をしていたり、給与所得または年金所得で還付される確定申告をしていたりする場合に、亡くなってから行う確定申告のことをいいます。

納税する必要がある場合の準確定申告は、相続するときから4か月以内に行わなければいけません。また還付のみの場合は、4か月を過ぎても準確定申告を行えます。

相続人で遺産の分配について話し合う

遺言書がある場合は、遺言書に基づき相続の手続きを行いますが、遺言書がなく法定の相続人だけで遺産を分配する場合には協議を行います。

話し合いをするときには、「遺産分割協議書」を作成します。この遺産分割協議書は、不動産や預貯金の名義変更をする際に提出する必要があります。

また協議後に遺族間で揉めごとが起きた場合にも証拠となるので、遺族同士で協議をするときには必ず遺産分割協議書を作るほうが相続手続きがスムーズに進みます。

現物分割

不動産を遺族で分割する方法はいくつかあります。どの方法が一番いいか遺産分割協議でしっかり話し合いましょう。

現物分割は、不動産や現金、美術品、宝石類や金、プラチナなど遺産をそのままの状態で分割する方法です。兄弟が3人いたら、長男が不動産を相続し、妹が現金を、次女が宝石を相続するといった形です。遺されたそのままの形でそれぞれの相続人が相続してから、使い続けたり売ったり自由にできます。

共有する

不動産を複数の相続人で共有する方法です。共有相続といいます。例えば3人兄弟で共有する場合は不動産の持ち分を3等分に分けて、登記は共有にします。

この方法で相続すると、のちに売るときや人に貸すときなどに名義人全員の賛同を得なければいけないのでなかなか意見がまとまらなくなる可能性もあります。

相続の方法の中ではトラブルが起きやすい方法かもしれません。

代償分割

代償分割は、相続人のうちの1人が不動産を相続して、ほかの相続人は不動産の代わりに不動産を相続した人から現金をもらう方法です。

例えば3,000万円の不動産を長男が相続して、1,500万円を妹に支払うなどになります。不動産を相続する相続人が、ほかの法定相続人に支払える相応の現金を持っていて支払えなければ、代償分割はできません。

不動産を売却後分割

不動産をまず売却してしまい、売却で得た金額を分ける方法を換価分割といいます。不動産を売って得た3,000万円を3人の兄弟で1,000万円ずつ分けるなどです。

遺産に関する協議は、ときには家族や親戚同士であっても意見が食い違い、うまく進まないこともあります。

揉めたりなかなか意見がまとまらなかったりする場合は、弁護士など遺産相続に関する専門家に相談しながら進めるといいでしょう。

財産の名義変更をする

遺産分割協議が無事に終わったら、不動産の名義変更をします。相続のために不動産の名義変更をすることを「相続登記」といいます。

相続登記に必要な書類は1人が相続する場合は、故人の出生から死亡までの戸籍謄本、法定相続人の戸籍謄本と住民票、相続する不動産の固定資産税評価証明書となります。

不動産を分割して相続する場合には、これらの書類に加えて法定相続人の印鑑証明書と遺産分割協議書が必要です。

相続登記は、不動産のある場所を管轄している法務局で行います。

相続税を納税する

不動産やそのほかの遺産を相続するときには相続税がかかります。遺産の総額から基礎控除額を引いた金額が課税対象になります。

相続する遺産が基礎控除額以内に収まっていれば、相続税は発生しません。相続税は平成27年に改正されて基礎控除の金額が40%減額と大幅に控除が減ったので、一般的な家庭での相続でも相続税が発生するケースが増えています。

相続税の納付場所は、故人の住所を管轄する税務署になります。

そのため地方に住む親の不動産を東京の息子が相続した場合は、地方に納税にいかなければいけませんが、相続税の申告書と必要書類の提出は郵送でも行えます。

不動産相続の手続きにかかる費用は?

不動産相続の手続きにかかる費用は?

不動産相続の手続きには相続税のほかにも費用がかかります。

遺産総額が大きくなったり相続人が少なかったりする場合は、高い相続税を支払わなければいけなくなる可能性もあります。

相続税

相続税は、相続する遺産の合計額によって決まります。

相続税の控除額の出しかたは、3,000万円に600万円×法定相続人の数を足した金額になります。例えば、3人兄弟で遺産を相続する場合、3,000万円と1,800万円で4,800万円が控除額になります。

相続税は遺産を相続した相続人全員で申告するのが基本ですが、別々での申告も可能です。相続税の納付は、相続開始を知った日の次のから10か月以内となっています。

登録免許税

登録免許税は、不動産の名義変更を行う相続登記のときに支払う費用です。登録免許税は相続する不動産の固定資産評価額をベースに計算します。

そのため相続登記では固定資産評価証明書が必要になります。

司法書士への報酬

一般的には相続登記の申請の手続きは難しく、専門的な知識のある司法書士に依頼して行う人の方が多いので、司法書士へ報酬も相続税や登録免許税のほかに考えておいた方がいいでしょう。

司法書士を依頼した場合、事務所によって報酬額は違いますがおおよそ5万円程度の報酬を支払います。

不動産相続の手続きは自分でできる?

不動産相続の手続きは自分でできる?

不動産相続の手続きは、必ずしも司法書士に頼まなければいけないわけではありません。自分で手続きや申告を行うこともできます。

ただし、法務局へは平日に行かなければいけませんし、遠くの役所の資料を取り寄せる、または出向いて取得する、法的な書類を何枚も作成する、などの作業を個人で行わなければいけません。

書類に不備があれば名義変更も納税もできません。

時間と手間をかければ自分で相続の手続きを行えますが、相続税の支払いは10か月と期限が決まっているので、専門家に報酬を支払って頼む方がいいか、自分で時間と労力を費やして手続きするかは総合的に判断してください。

不動産相続の手続きは早めに進めよう

不動産相続の手続きは早めに進めよう

不動産を相続するときにはさまざまな書類作成や手続きが必要です。必要書類を取り寄せるのに時間がかかることもあります。

相続税を納付しなければいけない場合は、相続開始を知ってから10か月以内に申告、納付する必要があるので故人の葬儀が一段落したら早めに取りかかるようにしましょう。